#21 ページ22
今日のお酒は、少し柑橘系の味がした。
香りは華やかなのに、とてものどごしのいいお酒だ。
土方「・・・」
土方さんは、私の話に特に返答をしなかった。
グイっとお酒を飲み干して、ふぅと息を吐く。ぶわっと胸が熱くなった。
「私、きっと自分勝手なんです。
人に合わせるの苦手だし、頑固で意地っ張り。夢もないの。」
目の前に並べてあったエビとブロッコリーをひょいと口に入れる。
エビのぷりぷり感とブロッコリーの歯ごたえがとてもマッチしている。
「とってもつまらない人間なんですよ。
だから、土方さんが私にこんな風に優しくしてくれるのが不思議です。」
そう言うと、土方さんはゴクリとお酒を-お互い前を向いてるからそんな気配がする-飲んだ。
そして、少し長めの息を吐くと私の座るスツールを自分の方に回した。
土方「くだらねぇ話は終わりか?
お前のどこがつまらねぇ人間なのか俺にはさっぱりわからねぇ。」
一日つけたままだったメガネの奥の力強い瞳が私を絡め取るように動けなくした。
眉間に皺がよっているのが少し強面を演出している。
土方「自分を否定するんじゃねぇ。お前は昨日、俺の話を聞いてなかったのか?
俺は言ったはずだ。”お前の笑顔で仕事がはかどった”と。
少なくとも俺は、お前に助けられてる。もっとお前を知りたいと思ってんだ。」
今の強面には似合わないけれど、ぶっきらぼうな優しい言葉だった。
この人は、少なからず私には存在の意義があると言葉の裏に組み込んでくれている。
「ありがとう・・・ございます・・・。」
涙が溢れそうで、思わず下を向いた。こんなに胸が溢れそうになったのはいつぶりだろうか。
頭の上に優しく手が乗り、子どもを扱うように優しく撫でてくれた。
土方「こんな話をさせて悪かったな。今日はもう休め。」
そう言うと、彼は私の手を取ってスツールから降りた。
軽く引っ張られるようにして私もスツールから降りると、あの部屋へ向かった。
大きな手に重ねられた自分の手を見ながら、パタパタと歩いていく。
思わずきゅっと彼の手を握ると、彼も優しく握り返してくれた。
部屋に入りベッドに私を座らせると、また頭を撫でてくれる。
土方「明日は特に急ぎの用事でもねぇから、好きな時間に起きるといい。
リビングには雪村がいるはずだ、言えばなんでも作ってくれる。食べたいものを言うといい。」
「はい、ありがとうございます。」
土方さんは少し悲しげな笑顔を落とすと、部屋を後にした。
56人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
土方優菜 - 土方さんガチ勢なので、1人赤面しながら悶えてました。裏も拝見しましたが、最高でした。 (11月5日 11時) (レス) id: 0bd3d38196 (このIDを非表示/違反報告)
奈智(プロフ) - もーさんさん» お読みいただきありがとうございます!わかりにくい表示で申し訳ありません。URLをお送りしますので、そちらからお願いします! (2019年7月16日 10時) (レス) id: 6159359968 (このIDを非表示/違反報告)
もーさん(プロフ) - 土方さんが推しなのですごく面白かったです!!裏を読みたいのですが表示されません、、汗 (2019年7月16日 4時) (レス) id: dc934c0dc5 (このIDを非表示/違反報告)
奈智(プロフ) - 桃香さん» お読みいただきありがとうございます!わかりにくい表示で申し訳ありません。URLをお送りしますので、そちらからお願いします! (2018年10月31日 9時) (レス) id: 21d901375a (このIDを非表示/違反報告)
桃香(プロフ) - とても面白かったです!!!裏を読みたいのですが表示されてなくて、、 (2018年10月31日 7時) (レス) id: e7856f2162 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:奈智 | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/home
作成日時:2015年11月24日 19時