薄桜鬼〜強引なその先は〜表

#11 ページ12

「お疲れ様でしたー！」

掃除を終えて、私は足早にお店を出る。

なぜかわくわくしていた。足取りは軽やかだ。

「えっと・・あの車かな・・・？」

昨日車が止まっていた場所に、今日は違う高級車が止まっていた。

車体は鮮やかな赤色をしていて、車高は高め。
5人乗りくらいのミニバンタイプだが、高級感が溢れ出ている。

そろりそろりと近づくと、運転席に座っていた人が私に気づき車を降りてきた。

土方「来たか。」

「こんばんは・・」

もちろんその人物は土方さんで、今回はジーパンにスニーカー。
上は長袖のTシャツとパーカーにダウンジャケットと割とラフな格好だ。

全部高そうだけど。

土方「二日連続で呼び出して悪いな。」

「いえ・・・今日はあの運転手さんいないんですね。」

土方「今日は俺の運転だ。」

車のキーを持ち、不敵に笑う土方さん。

車に腰掛けている様はどこかのカー雑誌の一面みたいだ。

土方さんは運転席に乗り込むと、助手席に乗れとジェスチャーしてくる。

ドアを開け助手席に座ると、優しい革のシートが私を包み込んでくれた。

真ん中には大きなナビゲーションがついていて、綺麗な映像のテレビが流れ
車内はホワイトムスクのような香りが鼻をくすぐった。

土方「行くぞ。」

静かにエンジンがうなり、車はゆっくりと走り出した。

走っているのかわからないくらい静かな音。

座り心地のいいシートは気を抜いたら眠ってしまいそうなくらいだ。

土方「そういえば、まだちゃんと名前聞いてなかったな。」

不意にそう言われ、彼のほうを見るとチラリと目だけをこちらに向けながらそう言った。

そういえば、名札についてる”長城”しか名前の情報なかったんだっけ・・・

「あ、えっと長城Aです。すみません、名乗るのが遅くなってしまって。」

土方「Aか・・・」

土方さんは私の謝罪には触れず、私の名前をつぶやいた。

呼び捨てだったことに、思わずドキリと心臓が跳ねる。

なんで名前を呼ばれただけなのにこんなに恥ずかしいんだろうか。

土方「これから行くところでご飯を食べる予定だが・・・何か食べたいものはあるか？」

土方さんの下の名前を聞こうとした瞬間、私が発するより先にそう聞かれた。

そういえば仕事が終わってすぐ合流したから、ご飯まだなんだった。

昨日と同じように、ぐううとお腹が鳴った。

「うーん・・・中華、とか？」

土方「中華か。たまにはいいな。」

そう言うと、土方さんはスピードを上げた。

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