ほんの一瞬の夢を見る (ページ8)

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言えないもどかしさページ8

壬氏side

武官A「あの！これよろしければ！」
武官B「私のも受け取っていただけませんか」
武官C「ぜひ私のも」

目の前でたくさんの男に囲まれている女性は
紛れもなく、俺のAだ

虫除けにと1番に俺の簪をさしておいたが
形式上はただの侍女に本当の俺の簪をさすわけにもいかず、
あの簪は何も効果を成していない

むしろ、あの綺麗な侍女は簪を受け取ってくれるという餌になってしまったのかもしれない

高順「壬氏さま、仕事をしてください」
Aを見ていると高順に小言を言われた
仕方がなく四夫人をまわる

最後に来たのはAが形式上、侍女をしている妃のもと

「ごきげんよう。玉葉妃は赤い衣がよく似合いますね」
玉葉妃「ありがとう」

玉葉妃に挨拶をし、少し目線を外せば、まだAはたくさんの男性に囲まれていた

玉葉妃「あらあら。嫉妬かしら」
事情を知っている玉葉妃はコロコロと笑う

仕方がなく、Aが気に入っている薬屋の元へと向かう

猫猫「ごきげんよう。壬氏さま」

振り返った彼女からはいつものソバカスが消えていた

「化粧をしているのか？」
猫猫「いいえ」

聞けば、いつもソバカスの化粧をしていたらしい

…なるほど、そういう化粧の使い方もあるのだな
今度Aにも…

今一度Aの方を見る…
さっきより人が集まっていないか？

猫猫「A、人気ですよね。それにしてもなんであんなに立派なものを持っているのにお手つきにならないのか…」

薬屋がそう呟く
それは俺のAだと主上もご存知だからだと言いたいが言えない

言えたらどんなに楽だろうか

あの輪の中に入り、"こいつは私のだ"と一言言うことが出来たのならば、どんなに楽だろうか

ああ、もどかしい