ほんの一瞬の夢を見る (ページ6)

今日:160 hit、昨日:491 hit、合計:119,335 hit

・ページ6

Aside

「っ、失礼しました」

今までの努力は全て無駄だった
そうよね、あんな幼い日の約束なんて覚えている方が珍しい

妓女(プロ)として今の酷い顔をお客様に見せる訳にはいかない
わたしは落としてしまったお酒の後始末をしようと屈む

梅梅「A、後始末は禿に任せなさい」

それを梅梅小姐が制する
わかってる、本当はわたしがやってはいけない

「大丈夫です。自分の不始末は自分で…」

そう後始末を進めようとすると誰かがわたしの腕を掴んだ
顔をあげればその手は彼の手だった

「っ、あの、困ります。妓女におさわりは…」
どうして彼が？
混乱しつつも、妓女(プロ)として彼に接する

？「…知っている。さっき薬屋に聞いた」

さっき…
彼が猫猫の唇に指をあて、自身の唇にその指をあてていた光景がフラッシュバックする

「でしたら…」

どうにか彼から離れようとつとめる
でも

梅梅「お客様、別室にご案内いたしましょう」

わたしの意に反して、梅梅小姐はそう言った

「梅梅小姐！？」

彼が一緒に時間を過ごしたいのは猫猫なはずなのに

梅梅「ほら、A」

それでも梅梅小姐に言われたら妓女(プロ)として仕事をしなければいけない

「お客様、どうぞこちらへ」

わたしは彼を連れて別室へ向かった

その別室でわたしは、彼がわたしを覚えていたこと
彼もわたしと会いたいと思っていたことを知る

じゃあなんで猫猫に…と問いつめたかったが、
ずっと慕っていた彼に

壬氏「…じゃあ俺がAの最初で最後になってもいいか」

そう言われてしまえば単純なわたしは喜ぶことしか出来なかった

約束通り、彼はわたしの最初で最後になってくれることになった

それでもわたしのモヤモヤは少し晴れなくて猫猫と距離を置いた

猫猫が彼を慕っていたらと思ったから
あの宴会での猫猫は彼に照れていたように思う

猫猫「A小姐！？身請けされるって」

「猫猫…、ええ、そうなの」

それでもずっと猫猫を避けることが出来るはずもなかった
思わず彼のことをどう思っているか聞けば
恋愛感情はないように思え、安心したわたしがいた

同時に関係を疑ったことを後悔した

その日、わたしはやり手婆のところへいき、
猫猫の借金を全て完済した

妓女としてそこそこ稼いでいたわたしにとって大した額ではなかった

今のわたしが唯一、猫猫に出来ることだと思った