ほんの一瞬の夢を見る (ページ43)

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阿多妃side

明日、後宮を去ることになった
飾りの妃として十数年ここにいたことに、
自分のことながら、莫迦だと思ってしまった

さっさと他の者に譲れば良かった
そうすればこんなにも悲しいことは起きなかっただろう

そして、目の前にいるこの子はあの子ともっと早く幸せになっているはずだった

A「私は、私は、阿多妃さまの侍女です。阿多妃さまにお仕え出来たことが一番の幸せでございました」

この子はたまたま拾った子だった
私の侍女とし、一番年少ながら、よく仕事をしてくれる子だった
風明はじめ、他の次女たちとも上手くやってくれていた

「そんなことを言ってはいけないよ。これからAはもっと幸せになるんだ」

そんなこの子を、あの子が気に入った
この子も、最初は戸惑っていたものの、次第にあの子に惹かれていた
私としても、あの子のそばにこの子がいてくれるならと安心もした

それでもこの子は、頑なに私の元を離れようとはしなかった

A"私は一生、阿多妃さまの侍女です"

結局、私が上級妃でいる限り、この子は私の侍女として仕え続けることとなった

あの時のあの子の顔と言ったら…忘れられないな
いつも大人びた顔をしている…しなければいけないあの子が
年相応の拗ねた顔をしたのだ

なんだ、そんな顔も出来るのかと嬉しくも思ったものだ

「あの子をどうか支えてやっておくれ」

私のせいで数年、あの子からこの子を引き離し続けてしまった
Aは、無言で頷いてくれた

「さて、私は戻るとするよ。Aはしばらくここにいるのかい？」

A「はい。もう少しだけ、月を眺めていようかと思います」

A、この子は明日、あの子の元へ嫁入りをする
きっと思うことが色々あるのだろう

花嫁とは、そんなものだ

でも、莫迦だなあ
自分の幸せのことだけ考えればいいのに

私は外壁を降り、部屋で待たせているあの子の元へ向かった