ほんの一瞬の夢を見る (ページ42)

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莫迦だなあページ42

Aside

明日私は後宮を去る
もうここに来ることは無いだろうと、花を一輪持って、恐らく彼女が登ったであろう外壁の上にのぼる
そこには…

「あら…先客でしたか。貴女は確か玉葉妃さまの…」
猫猫「猫猫です。今退きますので」

玉葉妃さまの侍女…猫猫がいた
直接は話したことは無いが、猫猫のことはよく聞いていたので、
悪い子ではないことは知っていた

「いえ、退かなくても結構です。ただ、少しだけ舞ってもいいですか」
猫猫「もちろん」

猫猫に許可をとった通り、私は舞う

水の中は冷たかっただろうな
どうして彼女は私に相談してくれなかったのだろうか

そんなことばかり考える

阿多妃「おや、珍しい組み合わせだな」

そこに私の主でもある阿多妃さまがいらした
私は舞を止める

「阿多妃さま！申し訳ございません、すぐに退きます」
猫猫「はい、空きますので」

阿多妃「いいや、Aの舞を見ながら猫猫、一杯付き合わないか？」

阿多妃は猫猫にそう盃を見せる
猫猫はそれを受け取る

阿多妃「A、もう少し、舞を見せてはくれぬか」

「はい」

私は再び舞う

最初は静かに私を見ていた阿多妃さまが、ぽつぽつと独り言のように猫猫に話をはじめる

猫猫は黙ってそれを聞いている

阿多妃「みんな、莫迦だ」

阿多妃さまのその言葉が耳に残る

本当にそう思う
みんなが、幸せになる道はなかったのか

私は舞の最後に花を水路に投げ入れた

阿多妃「久しぶりにAの舞を見たが、やはり美しいな」
「勿体なきお言葉です」

阿多妃さまに再び会うことが叶ったとしても
阿多妃さまの前で舞うことが出来るのも、今日が最後になるかもしれない

そう思うと切なくなった

阿多妃「猫猫、こちらから付き合うようにお願いして申し訳ないが、席を外してもらえるだろうか」

阿多妃さまは猫猫にそういう

猫猫「はい。お酒、ご馳走様でした」

猫猫は一礼し、外壁から降りていく

阿多妃「私がこの地位にしがみついていたせいで、Aには悪いことをしたな」

猫猫が下に降りたのを確認し、阿多妃さまはぽつりと話し出す

「いえ！そんなことはございません。阿多妃さまにお仕えした日々は幸せでございました」

阿多妃「Aだけでなく、あの子にもか。ようやく2人が結ばれるのだな」

その言葉を聞いてなんとも言えない気持ちになる

阿多妃「なんだ結婚前の憂鬱(マリッジブルー)か？」

阿多妃さまは優しい目のまま、豪快に笑った