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壬氏side
ここまでするつもりはなかった
特に薬屋と知り合いという手前、ここまでしてはいけなかった
A「壬氏さまは、私をどうなさるおつもりですか」
俺の腕の中で、彼女はそう問う
おそらく、薬屋から俺が宦官だと聞いていたのだろう
「身請けしたら、俺を恨むか?」
A「ふふ、不穏要素は手元に置いておいた方が安全ですものね。でも、壬氏さまがどのような立場か分かりかねますが、私は身寄りのない妓女ですよ。そんな女を身請けだなんて」
彼女はまだ過去を引きずり、先帝を想っているのだろう
「俺では駄目か?」
抱きしめる力を少し強める
A「本気で仰っています?」
彼女は俺の胸に隠れていた顔を俺の方に向ける
「本気じゃなきゃここまでしなかった」
A「私が壬氏さまを誰かに重ねていたとしても、ですか」
「それでも俺は構わない」
もう、その相手はこの世にいないのだから
これから気持ちが俺に向けばいい
A「莫迦なんじゃないですか」
「好きな者を手元に置けるのであればなんでもいい」
…翌日、俺は妓楼の店主にAの身請けを申し出た
先帝のことを考えると反対されるかと思ったが
店主は金子を弾んで貰えるのであればとあっさりと承諾した
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A「それは…雰囲気がどこか似るわけですね」
身請けが決まった日、俺は彼女に本当の身分を明かした
「まさか俺だって同じ人に惹かれるとは思わなかった」
A「因縁ですね」
「早くAにも俺のことを好きになってもらいたいものだが」
A「私、たぶんもうあの方ではなく貴方さまが好きですよ」
彼女はそう笑った
それは妓女の微笑みでも薬屋のことを話す笑みでもなく
新しい笑みだった
「本当か!?」
思わず彼女を抱き締める
A「こんなに早く思い出が上書きされてしまうなんて、少し悔しいですが。私は貴方さまが好きみたいです」
俺は彼女を抱き締める力を少し強めた
「Aの侍女には薬屋をつけよう」
A「猫猫にバレてもいいんですか?」
「薬屋ならいいだろう」
A「猫猫、嫌がりそうですね」
不思議な因縁
それでも俺は今、幸せだ
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猫猫「(ぞわっ)」
おやじ「おや?猫猫、どうしたんだい?」
猫猫「なんかまた面倒事に巻き込まれる気がする」
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シホ(プロフ) - 求めていた壬氏様に出会えました!とても好みの内容で幸せです! (1月4日 14時) (レス) @page45 id: 2de7cdac1e (このIDを非表示/違反報告)
xxximmmmmxxx(プロフ) - ♡ (12月4日 7時) (レス) id: 0c1ea22a5d (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2023年12月3日 12時