ほんの一瞬の夢を見る (ページ5)

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Aside

？「お、お前が立派な妓女になったら、俺が身請けしてやる」
今でも覚えている、幼き日のあのひとときを

どこの誰かは分からないけれど綺麗な男の子だった
あのひとときが、あの一言が、今のわたしをつくっている

婆「A！もう準備は出来たかい！？お客様がお待ちだよ」
「はーい」

小姐たちにはまだ程遠いけれど
わたしだってそれなりに人気がある方だと思う

顔だって、カラダだって、芸ごとだって磨いてきた
磨くたびに、立派な妓女ってなんだろうとは思う

あの男の子は、あの約束なんてもう覚えていないかもしれない
そもそも、わたしがここにいることを知らないかもしれない

それでも、ほんの少し期待を抱いて
わたしは日々、カラダは売らず、客をとっていた…－

「猫猫！お帰りなさい！」
猫猫「A小姐！ただいま！」

ある日、人攫いに後宮へと連れていかれた猫猫が花街に帰ってきた
やり手婆が言うには、後宮を解雇されたらしい

猫猫はわたしの1つ下で、まるで姉妹のように育ってきた
血の繋がりは全くないけれど小姐たち曰く
なんとなく雰囲気が似ているらしい

わたしも猫猫といると楽だなあと思うから
たぶん、考え方とかが似ているのかもしれない

もっとも、猫猫みたいに毒を験す勇気もないし
毒や薬に関する知識もないけれど…

婆「A、猫猫に芸ごとの復習をさせてやりな」
「え、猫猫、妓女になるの？」
婆「当たり前だ」

ちらっと猫猫を見れば複雑そうな顔をしていた
猫猫は薬屋でいたいはず

「猫猫、行きましょう」
でも、やり手婆にはわたしも逆らえないから
猫猫の手を引いてわたしの部屋へと向かう

やり手婆に逆らわず、どうにか猫猫を守らなきゃいけない
だって猫猫は可愛い妹だから

わたしはその日から、猫猫が売りものにならないよう
短期就労(アルバイト)程度で済むよう取り計らった

あのときは、そんな大好きな猫猫を妬ましく思ってしまう日がくるなんて、思ってもいなかった

緑青館の三姫に加え、相当な人数の妓女が呼ばれた宴会で
わたしは、彼と再会した

ひと目で彼だと分かった

でもどこか落ち込んだ様子の彼はわたしの舞を見るわけでもなく
1人で酒を飲んでいた

舞が終わりお酌に彼の元へ向かおうと思っていた
でもそんなわたしより早く彼に近づいた妓女がいた

猫猫…

2人は知り合いだったみたいで、
彼は顔を上げ、愛おしそうに猫猫を見ていた

お酒が手から滑り落ちてわたしはハッとした