ほんの一瞬の夢を見る (ページ38)

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Aside

今日はお茶汲みだけかしらと思っていたら、禿に呼ばれた

外に行けば、猫猫がいた

「あら！猫猫！おかえりなさい」

久しぶりの猫猫に思わず顔が緩む

数週間前にも猫猫が武官を連れて帰ってきていたが、体調を崩していて会うことが出来なかった

猫猫は私と同い年でとても可愛らしい子
とても薬や毒に詳しくて、お話が面白いから
お休みの日にはやり手婆には内緒で、
よく猫猫と薬草を摘みにいっていた
人攫いに攫われて今は後宮で勤めているからなかなか会えないけれど

今回はどれだけ花街にいてくれるのかしら

やり手婆「A、お客様だよ、あの部屋にお通ししてもてなすように。夕餉は猫猫ととるようだから席を外していいよ」

猫猫の隣を見れば美しい男性がいた

A「っ」

その美しい男性はあの方にどこか似ていた

「かしこまりました。お客様、どうぞこちらへ」

あの人との夜を最初で最後にしたかった私は
元々カラダを売ることはしていないけれど、
あの方にどこか似ている彼に少し心臓の音がうるさかった

似ているとはいえ、別人だけれども
それにさっきの雰囲気と夕餉を猫猫ととるといったところから
猫猫のことが好きなのかしらなんて思う

「何とお呼びすればよろしいでしょうか」

壬氏「……俺のことは"壬氏"と」

お客様は少し考えた後、そう答えた

「承知しました、壬氏さま」

その姿がやはりあの方と重なってしまう
それでも私は妓女だから
冷静を装ってお客様に笑みを浮かべた

壬氏「薬屋とは仲がいいのか」
「はい。同い年ですので、昔から一緒にいることが多く…」

夕餉までの時間はただ話をするだけだった
主に、猫猫の話が多く、やはりこのお客様は猫猫のことが好きなのだとほぼ確信していた

壬氏「Aの微笑みは人形のようだな」

猫猫の話をする中、突然、壬氏さまはそのように笑う
この笑みについて言及したのは今まであの方だけだった

「…360度どこから見ても美しい笑みを勉強しましたので」
壬氏「薬屋の話をしているときの笑みの方が好きだな」

嬉しいのはあの方からの言葉なはずなのに、顔が熱くなる気がした

「ありがとうございます」
猫猫「失礼します。夕餉をお持ちしました」

外から猫猫の声が聞こえて安心する
これ以上、心が乱されることはなさそう

「では私はこれで…」
壬氏「夕餉のあとも時間を貰えるか？金は払う」
やり手婆「もちろんです」

…どこからあらわれたのか、やり手婆が返事をしていた