ほんの一瞬の夢を見る (ページ34)

今日:239 hit、昨日:491 hit、合計:119,414 hit

・ページ34

高順side

「失礼します。末娘を連れてまいりました」
A「はじめまして。Aと申します」

翌日、主の執務室に末娘を連れていった

壬氏「…なるほど、似ていないな」
「妻と私のいい所だけを綺麗に受け継いでおりますので。A、この方のことは壬氏さまとお呼びするように」
A「承知しました。壬氏さま、私は外で働いたことがございませんので、ご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします」

壬氏「ああ。取り急ぎ、この書類をこのように分けといて貰えるだろうか。私は高順と出かける。困ったことや分からないことがあれば水蓮に聞いてくれ」

主が頼んだのは下女の仕事ではなく、官女としての仕事だった
…Aの技量であれば問題ないと思うが

A「承知しました」

末娘はやはり、主を見ても色めき立つことはなく、事務的な返事をした

壬氏「高順、行くぞ」
「はっ」

水蓮さまがいるのであれば大丈夫だろう
私は主と部屋を出た

壬氏「あれはお前が隠しておきたくなるのも分かるな」
部屋を出ると主が楽しそうに笑う
「隠していたわけでは…」
壬氏「後宮に入れば上級妃をも狙える美貌だぞ」
「…私どもの家系では上級妃は無理でございます」
壬氏「美貌については否定しないんだな」

末娘の美貌については言及するが
特に末娘に興味を持っていない主に安心をした

A「おかえりなさいませ」

執務室に戻ると、積み上がっていた書類が綺麗に分類されていた

壬氏「ほう。早かったな」
水蓮「早いも何も、ものの数分で終わらせて、掃除などをしてくれましたよ。猫猫も働き者で助かっていましたが、Aも劣りません」
A「水蓮さま、褒めすぎです」

まさか末娘がここまで出来るとは私も想定外だった
主とちらりと分けられた書類に目を通すが、的確に分けられていそうだ

壬氏「…これはどういうことだ？」

主がその書類の中に色の紙が貼り付けられたものを見つける
色の紙には何やら文字も書いてある
よく見ればそういった書類が何枚かあるようだ

A「正確にはそちらに書いたものが正しいかと…」

末娘はおずおずと答える

壬氏「ふむ…」

A「差し出がましい真似をして申し訳…」

末娘も指摘するか悩んだのだろう

壬氏「さすが馬の一族だな。助かる」

主は笑った

A「勿体なきお言葉です」

末娘は安心したように笑った