ほんの一瞬の夢を見る (ページ28)

今日:250 hit、昨日:491 hit、合計:119,425 hit

・ページ28

壬氏side

その弱さを隠そうとする健気な姿に、思わず彼女の顔に触れたくなる
それでもさっきの彼女の言葉を思い出し、手を引く
そして自らの髪にささる簪に手をかけ、彼女の髪にさした

A「壬氏さま…？」
「その簪をつけていれば、面倒な奴から声をかけられることも減るだろう」

俺は立ち上がる

「早く部屋に戻るように」

そして部屋へ向かって歩き出す
柄にもないことをしてしまった俺の顔は多分真っ赤だ

羅漢「失礼するよ」

その数日後、変人軍師がまた執務室にやってきた
少しだけ嫌な予感がした

羅漢「七番をお気に召したようで」

変人軍師はにたにた笑っていた
簪を渡した時点でこうなることは分かっていた

羅漢「どうですかな？おたくの下女と七番を交換しますか？」

正直言えば、彼女…Aを手元に置きたい
ただ、薬屋はAとは違った意味で手元に置いておきたい

猫猫「それでは数日に1度、Aと私が役割を交代するというのはいかがでしょう」

変人軍師が来たことで隅に隠れていた薬屋が出てきた

羅漢「猫猫ー！」

先程までの表情とは打って変わって変人軍師は笑顔になる

猫猫「うげ」

「…いいのか、薬屋」

猫猫「まあ、はい。苦手なだけで嫌いではありませんし」

羅漢「猫猫ー」

「羅漢殿、とりあえずそういうことでどうだろうか」

羅漢「猫猫に会えるようになるのであれば」

それから3日に1度、Aが執務室に来るようになった

先日の件は落ち着いたようで、今まで通り、色目を使っては間違いや不正を正している

彼女の髪には俺の簪がささっており、見る度に顔がにやけそうになるが
俺は彼女に仕事を依頼するだけで、何も出来ないでいる

猫猫「まったく、壬氏さまはヘタレなんですか。何のためにわたしがあの変人のところへ行っていると思っているんです」

薬屋にまでそう言われてしまうが、どうすればいいのか分からないのだ

猫猫「まあ、Aの過去を考えると手を出しにくいのは分かりますけれど」

「薬屋も知っていたのか」

猫猫「何がともあれ、このままあの変人のもとに通い続けるのは嫌なので、なんとか決着をつけてくださいね」

薬屋はそう言って部屋を出ていった

確かにそうだな…

噂の七番…
さて、俺はどうやって彼女を手に入れようか