ほんの一瞬の夢を見る (ページ25)

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壬氏side

執務室に戻ったら薬屋も水蓮もいなかった
水蓮は夕餉を準備しているのだろうと分かったが薬屋の行方は分からなかった
まさか変な奴にまた絡まれているんじゃないかと少し心配した頃、薬屋は少し機嫌が良さそうに帰ってきた

聞けば、七番…Aと会っていたらしい
薬屋を上機嫌にさせるとはどんな話をしたんだろうか

あれから彼女の評判は続々と耳に入っていた
羅半という文官の下に美人な女官がいるということ
何故か最近文官による不正が大幅に減っているということ

あの変人軍師は人を見る目はある
そんな彼に買われた彼女はやはり使える人材なのだろう

「この書類の山もどうにかしてくれたりするのだろうか」

明らかに不要、不正と思われる書類の山を見てため息をつく
これをひとつひとつ返却するのは骨が折れる

猫猫「…Aに頼んでみます？」

俺の独り言を聞いた薬屋がそう問う

「いや、それは羅漢殿に借りをすることになる…」

猫猫「Aが1人でいる時間を知っているので、なんとかなりますよ」

「本当か」

猫猫「さっそく明日行ってみますね」

翌日、薬屋に連れられ、本当に彼女は来た

A「麗しき宦官さまに恩を売るのも悪くないかなあと思いまして」

相変わらず綺麗な笑みを浮かべる

「まあ無料とは言わないが…何を望むんだ」

同じように笑みを返す

A「今のところは満たされておりますので何も。もし今後何かありましたらお力をお貸しください」

更なる笑みが返ってきた

「わかった。では申し訳ないがこれらお願いできるだろうか」

A「かしこまりました」

彼女は書類を持って出ていった

「さて…」
高順「まさか壬氏さま…」
「つけるか」

彼女がどう書類を返すか気になった

猫猫「A、鋭いんで気をつけてくださいよ」

薬屋のそんな言葉を背に執務室を出た

A「失礼いたします。こちらなんですけれど…」
文官B「！、ごめんね、間違えた方を出したみたい」

A「ここ、どうしても分からなくて」
文官C「っ、ちょ、ちょっと待ってね、これ8じゃなくて6だね。書き間違えてたのかなあ」

Aの色っぽい表情と柔らかい声に次々と書類が正しいものになる

高順「下手したら国をも傾けますよ」

一緒に見ていた高順もそうつぶやく

文官W「良かったらわたしの部屋で教えようか」
そう彼女の仕事ぶりに驚かされていた時に問題はおこった
色目が効きすぎた文官がいた

妓女だったのであればと思ったが彼女は固まっている