ほんの一瞬の夢を見る (ページ23)

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猫猫side

七番「はい。お茶とお煎餅」
「ありがとう、ございます」
七番「羅漢さまによると私たち同い年みたいだから敬語はなしにしましょ？」
「それでいいなら」
七番「さっき思わず呼んじゃったけれど、猫猫って呼んでも大丈夫だった？」
「ああ」

七番は想像以上にいい人だった
私にはあの嘘くさい笑みを浮かべることもない

「…なんて呼べば？」
さすがに同い年の子に七番と呼ぶのは気が引ける

七番「七番でいいのよ」
「いや、それは…」
七番「…猫猫ならいっか。Aって呼んで」
「分かった、A」

A「私ね、本当は名前呼ばれるの好きじゃないの。特に男の人に」

何も聞いていないのにAはポツリと話し始めた

A「ねえ、猫猫は私が買われた理由を知る権利があると思うのだけれど、どう？聞いてくれる？」

権利と言うのは、私があの人の娘だからだろう
そんな権利はいらない、が

「私が聞いてもいいのなら」

聞きたいと思ってしまった

Aの実家は貧しく、幼い頃に花街に売られたらしい
その頃のAは、貧しかったため身なりが整っておらず
売れた先は最悪な店だったとか

しかしちょっと磨けば美しくなったAを
その店の店主は看板娘にし、高い商品としたらしい

そんなAを手折りたいと思った客は山ほどおり
幾度も薬を盛られ、身の危険に晒されるも店主は助けてくれなかった

ここにいても危険に晒され続けるだけだと察したAは、店を抜け出し、花街を抜けた際に、あの変人軍師に会い助けを求めたとか

「いや、でもなんであんな変人軍師なんかに…」

A「猫猫にとっては憎らしい人かもしれないけれど…私、これでも人を見る目はあるのよ。色んな客に会ってきたんだから。羅漢さまは一目見て分かったわ。絶対に私に興味を持たない人だって」

確かにあの変人軍師はどんなに美しい者にも興味を持たないだろう…なんせ顔が分からないのだから

A「でも同時に、この人、使える人材なら興味を持ってくれる人なんじゃないかとも思ったの。だから、羅漢さまに私自身を売り込んで、今に至るの」

なんていう洞察力なんだと感心してしまった

A「そしたら想像以上に良かったわ。気持ち悪い男に名前を呼ばれ続けて嫌になっていたんだけど、羅漢さま、私を番号で呼ぶんだもの」

そう笑うAは本当に嬉しそうだった
なるほど、Aは変人な訳ではなく、変人軍師がまともに見えるほど変な奴にしか会ってこなかったのか