ほんの一瞬の夢を見る (ページ21)

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壬氏side

七番「お初にお目にかかります、七番です」

七番と呼ばれた彼女は綺麗な笑みをつくり、顔を下げた
その笑みの作りかたも、その立ち振る舞い方も、想像していた通りどこか自らに近いものを感じた

この見栄えでこの振る舞いなら、間違いなく多くの男が堕ちるだろう

壬氏「私が七番…と呼ぶのもどうかと思うので、名前を教えてもらえないだろうか」

軍師は人の顔を認識することが出来ず、自ら養子にした者たちを番号で呼ぶ
しかし、いくら自分より下の身分であろうと、他人を番号で呼ぶのは気が引ける

七番「…私は名前を呼ばれるような身分ではございませんので、どうぞ七番とお呼びください」

彼女は再び綺麗な笑みをつくる

「さすがに綺麗な方を番号でお呼びするのは気が引けるのでね」

こちらも負けじと笑みをつくる

七番「ご命令とあらば」

しかし彼女も引かない

狐の化かし合いとでもいうのだろうか

軍師「はっはっ、やはり貴方様と七番は気が合うようですね。七番、名乗りなさい」

七番「…はい。Aと申します」

彼女は笑みを崩さず答えた

軍師「どうかね、よければ七番と交換しないだろうか」

なるほど、それが狙いかと察する

「油揚げを返せと」

油揚げとは薬屋のことである

軍師「さすがに返せと言うのは違うと思いましてね、娘と同じように面倒事を解決する七番であれば貴方様も納得するのではと」

彼女はそこまで言われても笑みを崩さず座っていた

どういう感情なのだろうか

普通の女性であれば、俺に身請けされることに喜ぶかもしれない

だが、この笑みはそういった類の笑みではないことは分かる

軍師「まあ、そのうち考えておいてください。七番、帰るよ」

七番「はい」

軍師と彼女は執務室を出ていった

薬屋を手放すつもりはない

しかし…悔しくはあるが、彼女…Aという女性に興味を持ち始めているのも事実ではあった