ほんの一瞬の夢を見る (ページ20)

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噂の七番ページ20

壬氏side

最近、やたらと面倒な軍師に絡まれる
絡んでくる理由は恐らく、緑青館に縁のある者を下女にしたからだろう

しかし、その軍師も花街で妓女を買ったという噂が流れ始めていた
軍師はその妓女を七番と呼び、面倒事の解決をさせているらしい

軍師「そういえば、最近、妓女を買いましてね」

まさか軍師自らその話をしてくるとは意外だった

「どんな妓女ですか？」

軍師「使える妓女ですよ。芸も学もあれば、華もある。何より己の使い方を分かっている」

どうにも居心地が悪く目を逸らした
それは後宮で自分の見た目の良さを使っている自分のように思えた
控える高順も複雑な顔をしている

同じような性質かもしれない

その心の内を知ってか軍師は続ける

軍師「いつか貴方様にもお目にかかってもらいたいものです」

それなら今此処に連れてこれば良かっただろうにと思うが、下手に会話を伸ばしたくはないので言葉を飲み込む

軍師「まあ、いずれ会うことになると思いますが…。よろしければこちら、女官たちにどうぞ。甘すぎない飲みやすい果実水ですから。それではまた明日」

結局何をしに来たのか分からないまま、軍師は徳利を置き、手を振り去っていった

「変人からの土産だ。水蓮と飲んでくれ」

仕事を終えると薬屋の元へ向かう

猫猫「…あの変人からですか」

徳利をあけて薬屋は淡々と問う

「…最近、その変人軍師が妓女を買ったらしいが知っているか」

薬屋の問いには答えず問いを投げかける

猫猫「あんな変人のことは知りませんよと言いたいところですが…噂程度には知っています」

「緑青館の知り合いか？」

猫猫「いえ、違ったので気になってしまったのです」

薬屋は軽くため息をついた

猫猫「あんな変人のところもどうかと思いますが、どうせなら緑青館の妓女を身請けして欲しかったですよ…」

それ以上のことは薬屋からは聞けなかった

翌日、昨日の薬屋の言葉が気になりつつ判を押していると

軍師「失礼するよ」

昨日の宣言通り今日も軍師がやってきた

軍師「どうですか？昨日私が言った妓女のこと、気になりませんか」

気にならないと言えば嘘になる
ただ、この軍師の策にはまるのは癪だ

「気になるも何も、会ったことがないのでなんとも」

軽くあしらう方が良いだろう

軍師「七番、入っておいで」

七番「失礼いたします」

変人が七番と呼ぶと上級妃に劣らない見栄えのいい女性が入ってきた

軍師「この子が私の買った妓女、七番です」