ほんの一瞬の夢を見る (ページ16)

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壬氏side

高順「かの者を見つけました」

あの下女の身元調査を依頼し、高順がそう報告してきたのは依頼から数週間経った頃だった

「お前にしては時間がかかったな」

名前もわかっている下女などすぐ身元がわかると思っていた

高順「申し訳ありません。…彼女は下女ではなく、下級妃でした」

その言葉に思考が固まる
下級妃であるならば1度くらい俺も会ったことがあるはずだ

しかし…
あの凛とした美しさのある下級妃には覚えがない…
皇帝が好みそうな下級妃を俺は見逃すはずはない…

A妃…A妃…

必死に思考を巡らせる

「っ、まさか」

名前で1人だけ思い当たる人物がいた

「いや、しかし…」

思い当たった彼女はお世辞にも美しいとは言い難く
地味で特徴のない下級妃だった

高順「恐らく、今壬氏さまが思い浮かべた方が、お探しの女性でした」

「…A妃のところへ行ってくる」

高順「お供します」

俺は急ぎ足でA妃のもとへ向かう

滅多に訪れることの無い下級妃の部屋が集まる館に来たため
周りはザワついていた

A妃の部屋の前に着けば、楽しそうな声が聞こえた
それはこの前聞いた下女の声と…薬屋の声だった

「失礼します」

A「ごきげんよう、壬氏さま」
猫猫「ごきげんよう、壬氏さま」

俺が部屋に入るとその2つの声が同じ言葉を発する

そしてそこには薬屋と、俺の知っているA妃がいた

本当にこのA妃があの時の下女なのだろうか…

A「あまり見つめられるような容姿ではありませんので」

唖然とする俺にA妃はそう優雅に微笑む
その振る舞いは梨花妃や玉葉妃にも並ぶほどだ

「失礼しました。先日は検死の御協力ありがとうございました。まさかA妃だとは思わず…」

A「ふふっ、先日は上手く化けれていたでしょう？」

彼女の本来の姿はどちらなのだろうか

猫猫「壬氏さま、A妃さまは私と同じです」

そう思っていると薬屋がそっと伝えてくれる

A「もう、猫猫。そんなに簡単に答えを教えてはダメでしょう」
猫猫「失礼しました。でも何度も言うように勿体ないなと」
A「それは猫猫も同じでしょう？」

笑い合う2人
薬屋とA妃はかなり打ち解けているようだ

そんな自然に笑うA妃はこの前と顔立ちはまるで別人だが好感を持てた