ほんの一瞬の夢を見る (ページ11)

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Aside

泣きそうな彼を見て、少しだけ、反省をした
私の手を引く彼の表情はいつもの余裕たっぷりの壬氏さまではない

年相応の…いや、早く大人にならなければいけなかった彼がどこかに隠していた子どもっぽさを感じる

「心配をかけてごめんなさい」

彼の寝台に横になるよう促された私は、彼にそう言う

壬氏「…なんであそこにいたんだ」

なんとも言えない表情で彼は私に問う

「食事会をのぞこうと思ったら、私が玉葉妃の侍女で毒味が出来ると知った宦官に出会って、主上の元へ連れていかれたの。主上の毒味役が突然体調を崩したみたいで…。そしたら主上が"私の近くにいると壬氏(あいつ)が嫉妬するから"って配慮してくださって猫猫と交代することになったの」

…私にとってはラッキーだったのだけれど…
と言いそうになって口を閉じる

壬氏「…心臓が止まるかと思った」

彼は私の隣に横になり、私を抱きしめる

「ふふっ、あれだけ毒を盛られてきた私がそうそう倒れないわ」

そんな彼を私は抱きしめ返す

今より私が彼のものだと知るものが多い頃、私はよく毒を盛られた
彼のものになると決心した時点でそうなることを予想していた私は毒や薬について短期間で勉強し、盛られた毒を少量ずつ摂取していくことで毒への耐性をつけた

もっとも、毒を盛られた時点でその首謀者を彼が排除していってしまったため、どんどん毒を盛られる回数は減り、彼と私の関係を知る者も片手で数えられるほどになってしまった

壬氏「Aが俺のものだと言えれば…俺の立場を公表すれば…こんな思いしなくてもいいのだろうか」

彼は皇位につきたくないから今の役職にいる
そして私を守るために私の本来の立場を公表してない
それが正しいのか、正しくないのか、彼はずっと悩んでいる

壬氏「それに、俺のものだと言えれば、こんなに言い寄られることもないだろうに」

彼は私の懐から簪たちを取り出す

「どれだけ言い寄られても、あなた以外には興味ないので」

子どものように拗ねる彼に軽く口付けをする

壬氏「もう今日は戻らなくてもいいだろうか」

彼は私の服に手をかける

「だめ。お仕事はちゃんとしないと。壬氏さまとして、玉葉妃の羹に毒を入れた犯人をつきとめなきゃ」

私はその手を制する

壬氏「…A、もうなんとなく分かっているんだろ」

「…ええ、あのね」

私は推測であるものの、園遊会での違和感と毒を入れた犯人の目的を伝えた