少女と事件と崩壊の幕開け ページ4
「おはよー」
「おはよ」
翌朝。桜花と友奈は通学路を歩いていた。ぼんやりと空を見上げ、友奈は呟く。
「雨、降りそうだねぇ」
「そうだね……友奈、傘持ってきた？」
「あるよ、折りたたみ」
そんな会話をしつつ、二人は曇天の下を歩く。
教室に入る。時計を見ると、ホームルームまでは少し時間があった。
「……あれ、麻音まだ来てないね」
「いや、ボクもう来てるよ」
突如かけられた声に振り返ると、麻音がいた。
「あれ、麻音？来てたの？」
「うん、さっき忘れ物しちゃって、職員室行ってたから」
「律儀だね」
「いや、だって国語の浦嶋先生、怖いし……」
他愛もない話をしつつ、席に着く。
――ガラガラッ
「おはよう〜」
「お早うございまーす」
ドアが開き、短髪の若い女性が入ってきた。担任の三和先生だ。
「では早速ホームルームを始めます。高木さん」
「はい、起立！」
日直の高木の号令で全員が立ち、挨拶する。そして着席。
「では……今日は二時間目、授業変更があります。参観日の出欠、明日までなのである人出してくださいね。……それと、乱咲さん。終わったら職員室まで」
「あ、はい……」
「じゃあ、号令」
「起立！」
再び挨拶し、着席するやいなや、友奈は桜花の机に向かった。
「ねー桜花、どうしたんだろ？ 珍しいよね」
「うん……」
「もしかして、昨日の第三中の……誰だっけ？」
「鷹山将太？」
「そう、その人。その件じゃないかなぁ……」
友奈は少し目を伏せる。桜花は少し考え、口を開いた。
「うーん……バレたのかな、どうなんだろう。とりあえず行ってみるよ」
「……とても、伝えづらいのですが」
「えっ？」
三輪先生の声は震えていた。
伏せられた瞳も揺れている。俯いたその姿は、どうにも悲しそうで。
ただならぬものを感じた。
「……どうしたんですか？先生」
「…………っ」
覚悟するように唇を引き結び、呟く。
「貴方の両親は……殺されたそうです。伯母さんに、殺されて」
「――えっ？」
言葉が弛緩し、意味が崩壊する。
掻き集め掻き合せて、ようやく掴んだ事実は、脳裏に焼きついた。
信じたくない、事実が。
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