病み相談者【d!】 (ページ6)

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次に来たのは可愛い豚のピンが付いたニット帽を被った茶髪の人だった。
もう慣れたもんだ、と座るよう促し話を始める。

「…名前をお聞きしても？」

これまで聞き忘れてしまっていた、名前確認。

「…黄鈴(こすず)。黄鈴紗織(こすずしゃお)」

「ん…？どういう字書くんですか？」

なんだか珍しい名前。
彼は答えずに此方に近付いて来た。

「俺が書いた方がはやいやろ…、ん、こーゆー字」

ほぉ、なんだか格好良い。
早速お話を始めよう。

「あの、どうしたんですか？話しても良い、ってことだけ話して下さい…」

「笑顔振り撒くの疲れたんや。何時もにこにこ笑顔で居らなあかん、もう嫌なんや。やから此処来た。」

笑顔を振り撒くのが疲れてしまった、とチェックシートに記入し顔をあげる。

「あぁ…、無理しちゃったんですね。無理せず、気楽にいましょうよ。そしたらきっと自然に笑顔になれます。」

にぱ、とぎこちない笑顔を浮かべて

「…ほら、作り笑顔って疲れちゃうし見ててあまり良い気はしなくないですか？」

と言う。
彼もにぱ、と笑い

「せやな、話聞いてくれてありがとぉな！」

と言ってきた。
眩しい。
笑顔が眩しい。

「んﾞｯ…他に何か話しておきたい事とかってありますか？」

「んー…特に無いな。」

悩む素振りがあったから、まだ話したい事はあるのだと分かる。
しかし初対面の相手に話すような事でも無いのだろう。問い詰めたら悪い。

「分かりました、話聞く事なら何時でもするので辛かったら来て下さいね。」

「ん、ほんまおおきに。」

扉から出て行く彼の姿を見送り、次は読書を始めた。