病み相談者【d!】 (ページ3)

今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:16,698 hit

. ページ3

こんこん、とノック音がする。
シャーペンの動きを止め、掠れた声ではい…、と返事をすると、誰かが入ってきた。

「はじめまして…、嗚呼、貴方が先生の言ってた…」

入ってきたのは気怠げな青年。
私よりは背が高くて年上に見えるけれど、学年色が緑な事から同学年の1年だと分かる。

「はい、はじめまして…、あ、座って下さい」

先生に渡されたチェックシートを用意してから次に椅子を用意し、座るよう促す。
すると大人しく座ってくれた。

「どうしたんですか…？」

問い詰めない。
極力優しく。
問うと彼はゆっくりだが答えてくれた。

「…俺、なんだか分かんないんすけど学校が嫌いなんです。教室が怖いんす。
自分の気持ちが分からへん。
そんな気持ちも分からへんのに休んじゃって、そんなんサボリや、って言われて。
なんなんすかね、どうしても怖いんすよ……」

嗚呼、この人も同じ。
私と、似ている。

「そうなんですね…、私も似ているから分かりますよ。
自分の気持ちが理解できない。怖い、って。
…それで、質問です。怖くなったきっかけとかってありますか？」

彼の言葉をそのままチェックシートに記入しながらきっかけを聞く。

「目の前でこそこそ話、みたいなんされて。自分のこと言われてるんやないか、って不安になって…、そこからっすかね」

「はい、分かりました…、他に話したいこと等ありますか？」

変に問い詰めるとかえって不快だ。
だから話したいことがあるか、と聞いてみる。
……すると。

「俺、今日はもう帰るんす。やから今度から教室行けない時此処来ても良いっすか？」

「んー…、私は大歓迎なのですが。先生へ話し、親の許可も必要なので…、今度先生に話しておきます」

そう。
此処は親の許可が必要。
だから私だけの決定は出来ない。
それを聞くと彼は残念そうに顔を曇らせた。

「そうなんすか。今日はありがとうございました、またくるかもなんで、そん時はお願いします」

立ち上がり、ぺこ、とお辞儀する彼につられて自分も立ち上がり会釈する。

…ふぅ。

境遇が似ているからだろうか。

なんだか話しやすかった気がする。