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23.もうしない ページ23

「安室さんって、彼女いるの?」
「……なんですか急に。」

Aからの突拍子もない質問に面食らった様子の安室だったが、すぐに表情を戻して返答した。

「いや、ただの興味本位。なんとなく気になっただけで、答えなくてもいいんですけど。」
「そうですか……、」
うーん、と数秒考えて安室は口を開いた。

「そういう貴方はどうなんです?」
「質問に質問で返すなよ。……ここ1年くらいはない、ですかね?」
「何故疑問形なんですか。」
「いや、ワンナイトとか、は……含めなくてもいいですよね、?」
「……ああ、なるほど。お若いことで。」
「ははは!安室さん程にもなれば、さぞ素敵な恋愛遍歴をお持ちなんでしょうねえ、!!」
「まあ、それなりに。」

Aは半目になってあからさまに嫌そうな顔を作る。
「そのご自慢の顔殴っていい?」
「ふふ、はいはい、落ち着いて。」
安室は笑いながらAを宥める。

「……で、話を戻しますが、」
「……はい、」
「今のところこれといってそういう相手は。まあ強いて言うなら、」
「……言うなら?」
「…………この国、とか。」


「……ハァ?、」
「好きなんですよ、この日本という国が。」
「はあ、それはまた……」
Aは心底意味が分からないという風に顔を顰めた。

「そんな壮大なスケールで語られると、いよいよ何から反応すればいいのか。いや、まあ、いい国ですよね日本……、」
「でしょう?」
Aの返答に安室は満足そうに微笑んだ。そんな安室にAは困惑した表情で、

「俺もうアンタに恋愛トークとかしない。」
「残念、盛り上がれそうだったのに。」
「どこが???いくら面倒だって、もう少し上手い躱し方があっただろうが、!」
「ふ、はは……っ、」
「何笑ってんだ。言っとくけど、アンタが言ってることのがよっぽどですからね?」
「わかってますよ、」

Aは不貞腐れた様子でそう返すと、再びベッドに横になった。安室もまた同じようにベッドに体を沈める。

「あーあ、なんだかどっと疲れた、」
「同感です。」
「アンタは面白がってただけじゃないですか。」
「そんな事は。」

Aは溜め息を吐いてスマホを充電器に繋ぐ。そのままゆっくりと目を閉じた。

「Aさん?」
「……、」
「……寝たんですか?」
「……、」

返事が無いAの顔をそっと覗き込むと、既に寝息を立てていた。全く起きる気配のないその姿に、やや呆れ気味に安室は笑った。

「……はは、幾ら何でも早過ぎるだろ。」

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作者名:ゐるか | 作成日時:2018年5月20日 0時

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