Sewing needle and shears (ページ9)

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9話ページ9

僕はまた台に乗って窓の外を眺めた。今度は悲鳴の他にメリーゴーランド辺りから微かに音楽が聞こえてくる。人も何人か乗っていた。メリーゴーランド自体は動いてないのに。
　お化け屋敷に続く行列の方に視線を移す。先頭は黒い服を着ていた。さっきは赤だった。僕はそこで思わず声をもらし、慌てて下から見えないようにしゃがんだ。そう、さっきは確かに赤い服を着ていたんだ。これは誰かの悪戯だ。それもとんでもなく悪趣味な。
　意を決して再び窓から下をのぞく。先頭は緑色の服を着ていた。おかしい。緑は確か前から5番目だったはずだ。誰かが動かしたとしても短い間に運べるわけがない。
　しばらくその行列から目を離さなかった。目を離している隙に動かれるのが嫌だというのもあるがそれ以上に『人形は自分では動かない』ことを確かめずにはいられなかったのだ。
　何分経っただろうか、行列が動く気配は一向にない。少し目が痛い。瞬きすらもろくにしていなかったのかもしれない。目を離したくはなかった。だが背後の廊下の方から足音が聞こえてくる。段々と近づいてきたと思った瞬間、ふと音が止んだ。台から降りて振り返る。

手を伸ばせば届く距離に一人の人間が立っていた。

台に乗ったままでいたなら目が合っていたかもしれない。その男は窓の方を凝視している。

「あの……」

声をかけてからあることに気づいて心臓が止まりそうになる。

男は赤い服を着ていた。

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