Sewing needle and shears (ページ6)

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6話ページ6

そこからは気がつけば逃げるように部屋を出ていた。振り向いたらそこにあのぬいぐるみがいるのではないかと気が気でならなかった。廊下をしばらく走ってからふと僕は足を止めた。はたしてこのまま先まで行っていいものか。そう思った直後、前方の角から影が出現した。薄っすらと紫の床に映る影は頭部から胴体と徐々に姿を現していく。逃げようと思った。だけど隠れる場所はない。それに仮に逃げたとしても相手が大人ならすぐ追いつかれてしまう。
　僕は影を確認しながら壁にもたれて座り、あのぬいぐるみのように手足を投げ出して俯いた。身動き一つせずに気を失っているふりをすれば見逃してくれるだろうか。
　足音が近づいてくる。どうしても怖くて目を開けることは出来なかった。だが何が起こるのか分からぬままこうしているのは耐えられないと、思い切って目を開ける。目を開けたことが相手に気づかれずに済むという点だけは頭に被せられたものに感謝した。
　2つの小さな穴から僕の前を通り過ぎていく人影が見える。その間が酷く長く感じた。どうやら上手くいったようだ。そう思っていた。数歩進んだ影が足を止め、向きを変えるまでは。
　鼓動が高鳴るのを感じながら横目で見ると影はゆっくりと、再びこちらへ近づいてきた。

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