Sewing needle and shears (ページ19)

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18話ページ19

僕は紫の廊下を進んだ。言いようもない孤独感に苛まれる。もうこの際殺人鬼でも何でもいいから『生きた人間』に会いたかった。

『行くな、ジェレミー……』

　ふと父さんの声を思い出す。それから何と言っていたか。

『頼む……俺を一人に、しないでくれ……』

　いつ、どういった場面で言われたのかは何故か覚えていない。それなのに声だけはこうして思い出せる。
　手がかりがほしい。カメラはもう壊れてしまった。それなら自分で何とかするしかない。
　僕は手を覆う布を見た。袖に縫いつけた糸を力任せに引っ張ればあっけなく千切れる。同じことをもう一度やって僕の両手から布が外れた。
　それから頭の布に手をやろうとしてもっと簡単な方法に気づいた僕は急いでシャツを脱いだ。片手でシャツをおさえ、ウサギの形をした布を何度か強く引くと次々と糸が千切れる。半分までいったところでもう一度シャツを着て一気に引いてからようやく布を完全に外すことが出来た。
　今までよりも一気に視界が良くなったおかげか少しだけ勇気づけられて廊下を進む。だがこちらへ向かってくる足音が聞こえて僕は鉄パイプを隠すように壁際に行って様子を見た。逃げ道を確認するために一度後ろを振り向く。

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