Sewing needle and shears (ページ1)

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1話ページ1

目が覚めると心なしかいつもより視野が狭くなっているような気がした。これも夢の続きだろうか。今だってたいてい夢でもよくあるように目の前がぼんやりとかすんでいる。長い間体重をかけていたのか背中が痛い。ずっと壁に寄りかかって寝ていたようだ。
僕は立ち上がろうとして指が開かないことに気づいた。見ると両手には手袋のような物がはめられており、それは服の袖と縫いつけられ外すことは出来ないようだ。だいぶ意識がはっきりとして顔にも何かが被せられていることに気づいてからようやく視野が狭い理由が分かった。どんなに引っ張っても手袋と同様、顔に被せられた何かも外すことは出来なかった。
　壁に手を軽くぶつけてみた。痛い。何度もぶつけた。ますます痛くなるばかりだ。夢と現実の判断がつかなくなるとたまに僕はこうして夢の中で確かめる。当たり前だが痛みなんて感じたことはなかった。どんなに認めたくなくてもこれは現実なんだ。
　今は何時だろうか。ここに来るまでの記憶がない。きっと今頃母さんが心配しているに違いない。いや、もしかしたら怒っているかもしれない。家にたどり着いてドアを開けた瞬間、家の中に引きずり込まれて長時間説教されるのは間違いない。『ジェレミー！一体これはどういうことなの！』なんてね。
……もし帰ることが出来れば、だけど。

僕は転ばないよう慎重に立ち上がった。歩けたことにホッとしながら進む。天井のランプと壁の電飾が作り出す光のせいで薄暗い廊下は嫌というほど紫の色に染められていた。

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