熱愛宣言【snr】 (ページ19)

今日:8 hit、昨日:19 hit、合計:11,743 hit

episode. 18 ページ19

.

センラさんと何度かLIMEでやり取りをして、ご飯の日になった。

まだ明るい夕刻、電車内には人が多く座る場所はなかった。長い座席の端のポールに体を寄せて支えにしながら、センラさんから送られてきたお店の情報を見直す。

雰囲気がすごく素敵なレストランで、写真もどれも美味しそうだ。価格は少し高めだけれど全然見合っていると思うし、かえって安心感がある。最高のお店すぎる。こんなところどうやって見つけたんだろう。

楽しみー……！やばい、にやけてしまう。もうマスクしてないんだから我慢しなきゃ。

電車が駅に着いて停車する。乗り込んできた人たちが周りに増えて、スマホ画面を覗かれないようにしつつ顔を伏せる。

『発車します。ご注意ください』

ガタン、と揺れたのが意外と大きく、堪えきれずに自分の位置がずれる。

ポールを掴もうとした時、誰かに後ろがぶつかってしまった。仄かな良い香りが鼻腔を擽る。

「危ないで。ちゃんと掴まっとかな」

周囲に聞こえないように抑えた声が降ってくる。

その顔を見上げて、私は驚いてしまった。

「セ――お、お兄さん……！？」

声量に気をつけつつそう発すると、黒いマスクをしているセンラさんの目元が優しくなる。

センラさんは日中お仕事があるから、目的地近くの通りで落ち合うことになっていたはずだけれど、予定が変わったのだろうか。それで乗った電車の車両まで同じになるなんて、すごい偶然だな。

そもそも今日の食事だって、偶然迎え待ちのセンラさんと会わなければなかったわけだし、センラさんとは縁があるのかも。……私がそう思いたいだけかな。

私の頭の中を読んだかのようにセンラさんが話し出す。

「仕事の都合が変わって、俺も電車使うことにしたんよ。ほんで乗ったら、すぐそこにAちゃんがおって」

「へえー。ほんとすごい偶然ですね」

「……ほんまにたまたまやねん。嘘みたいな話やねんけど……」

「えっ、疑ってないですよ！一緒に行けるの嬉しいです」

センラさんが何故かいたたまれないような顔をしてぼそぼそと言うので、慌ててフォローを入れる。

俯いていた金色の眼がゆるりと私を捉えて、嬉しそうに笑みを孕んだ。

「俺もラッキーやって思ってる」

私にだけ聞こえるように抑えられた声は自然と囁くようになって、それにもドキッとしてしまう。

本当に格好良すぎて困るな……。