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三話目でーすっ ページ5




「じゃあ、次はペアを組んで下さーい」


四時限目の授業中、私はこっそり溜息を吐く。

こういうのが一番、困ってしまう。


私は絶対に余る。

でもうちのクラスは、偶数だから余りは出ない。

つまり、一人誰かは嫌々私と組む事になるのだ。


嫌だなぁ…あ、勿論“私が”じゃなくて

“相手”が嫌々組む事を思うと、って話だけれど。


誰かに「一緒に組もう!」って言われてみたい。

私から遠慮せずに「私と組んで!」って言ってみたい。


友達と一緒に笑いながら、授業を受けるってどんな感じなんだろう。

度々ふざけ合いながら、でも分からない所は教え合いながら。

どんなに苦手でも友達と、ってだけで楽しそうに感じる。


「って…やっぱり余りかぁ」


思わず、苦笑が口から零れる。

周りを見渡せば、クラスメイトは既にペアを組んで英語のスピーチの練習をしていた。

泣きたくなって仕方ない時もあったけれど、一々気にしていたらきりがない。


まだ組んでない子を見つけて、私は声を掛ける。

目立たないけれど優しい、と評判の子だった。

名前は澄田さんで、多分よくいるグループが奇数だから余ってしまったのだと思う。


彼女は気不味そうな顔で、私を見つめる。

でも次の瞬間、控えめな笑顔で「組もっか…浪木さん」と言った。


彼女は私に対しても、穏やかで優しく接してくれた。

本心は分からないけれど、きっと精一杯気を遣ってくれているのだと思う。


「あ、浪木さん、ここの表現はもっと日常で使うような感じの方が良いと思うよ」

「そうなの?…あ、本当だ。こっちの方が伝わり易いね。ありがとう」


普通は私と組む人は一言も、話してくれないんだけどなぁ。

澄田さんは「英語は得意なの」と笑って言ってくれた。


彼女の笑顔を見ていたら、ふっと何かが自分の中に沸き上がってきた。



……知らなかったんだ。

クラスにこういう人もいるんだって事。


何処へ行ってもきっと、受け入れて貰えないって思ってたから。

私、一人で力み過ぎてたのかもしれない。


嬉しくて、でも胸の奥がぎゅっとなって

欲張りな自分が、お喋りを始めてしまいそうだった。


駄目だ。

ここで抑えなきゃ、この魔法みたいな瞬間が消えてしまう。

きっとこれはほんの一瞬の事なのだから、少しでも自分の中に留めておきたい。


「ありがとう、澄田さん」


もう一度、私は言った。

初めての感覚でふわふわして、居心地よくて。


一人じゃない、楽しい時間だったんだ。

四話目だね!→←【お礼】



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柏木美琴(プロフ) - というか今どき学校でぶりっ子嫌われたりするんですね。私の学校は友好関係全部良かったですよ。まあ、進学校で勉強とかで忙しいから人の喋り方とか嫌がらせしている暇とかないからだと思いますけど (2021年5月16日 11時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - 自分の思ってる価値観と世間一般の価値観が大幅にズレているからこうなってしまうんでしょうね。私も背が低いですけど上目遣いなんてしてませんよ。首の角度あげたら済む話じゃないですか。でもこういう人って価値観のズレみいつまでも直そうとしないから嫌われるんだよ (2021年5月16日 11時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
瑚桜 - 素晴らしいですね…!こんな人が居るということを改めて感じさせられました…! (2020年10月22日 19時) (レス) id: 3cd7fd4374 (このIDを非表示/違反報告)
アール - 私は"ぶりっ子”ではないですが、共感された方も多いと思える作品でした。 (2018年7月15日 2時) (レス) id: 687a55ccd1 (このIDを非表示/違反報告)
リアビーバ− - りるりるさんにはまだ未来があります。諦めず前を向いて自分の未来を作って言ってください! (2018年3月4日 16時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空美都 | 作成日時:2016年12月20日 18時

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