＊12 ページ12
.
廉の部屋の前で、帰ってくるのをじっと待った。
連絡を入れようかとも思ったけど、もしかしたら今日はすぐに帰れないかもしれないし。
廉に変に気を遣わせたくなかった。
.
｢A？なにしてんねんこんなとこで｣
『あ、廉。おかえり、待ってた』
とっくに日付は超えている。
｢待ってたって、何時か分かっとるん？連絡くれればすぐ帰ってきたのに。体冷えてへん？｣
ほら、廉はやっぱり連絡すればわたしを優先してしまうような優しい人だ。
｢とりあえず中入り？｣
『ありがと。』
家に入るなりわたしに毛布を巻き付けて、キッチンに立った廉は、わたしが何か話し出すのを待っているようだった。
『廉、おめでとう。ＣＤデビュー、』
｢ありがとう。驚いたやろ？｣
『うん、びっくりした。廉も知らなかったんでしょ？』
｢おん、俺もびっくりや。｣
『よかったね、廉の夢が叶って。』
ちゃんと笑えているだろうか？
｢ん、Aは嬉しくなさそうな顔やけど？｣
『嬉しいよ、ほんとに。……でも、寂しい。』
.
正直言ってしまえば、廉のデビューが決まって複雑な気持ちだ。
いっそこのまま芽が開かずにいて、
廉が夢を諦めてしまえばいいと思ったこともあった。
わたしと廉の間にある壁が、廉がアイドルであることで起きているのなら、そんな壁は無くなってしまえばいいのに、なんて。
わたしだけの廉にしてしまいたかったのかもしれない。
だけど、廉たちがデビューの報告をした後、劇場内に響き渡った温かい拍手を聞いて、自分の考えがいかに薄っぺらくて独りよがりだったのかを思い知った。
.
｢Aの気持ちはちゃんと届いてるから。｣
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1657人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なな - 本当に切なくて、でも、どこか幸せで温かくて、涙がとまりませんでした。だいすきです！ (2018年10月2日 4時) (
レス) id: d317cbb504 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる - お互いに好きなのに別れるとゆう選択、切ないですよね…二人にとって幸せな瞬間があったってゆう事実がその後の人生にいい影響を与えていたらいいなと願ってます!! (2018年10月1日 9時) (携帯から) (レス) id: 075c6f1d28 (このIDを非表示/違反報告)
Yuka(プロフ) - 涙止まらないくらい切ない。。でも、好きな作品でした！出会えて幸せでした！また続編も楽しみにしています！ (2018年9月16日 21時) (レス) id: e3f933bc47 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - まりさん» コメントありがとうございます！今書き上げている作品が終わり次第続編を始められたらなと思っていますので楽しみにしていていただけると嬉しいです！ (2018年8月8日 23時) (レス) id: 76e7965f2e (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 卍さん» ありがとうございます！またこちらでお会いできたら嬉しいです！ (2018年8月8日 23時) (レス) id: 76e7965f2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るる
| 作成日時：2018年7月16日 20時
