３ ページ5
再び扉の鈴の音が鳴る。
本日二人目のお客様はまた男だ。
見た目より妙に大人びている。
眼は神経質に切れ上り、鼻筋が通って、ちょっと頬骨が高く男性的の人体電気の鋭そうな、美青年の紳士。
わあ、イケメン。
作られた笑いを顔をつけて、男の前に出て行く。
「いらっしゃいませ。お客様は何をご要望で？」
「魔法使い。魔法使いを出せ」
蔑みと威嚇が混じった目つきで僕を見るお客。
人間でもない僕が人間に対してここまで恐怖を感じるのは初めてだ。
「あの、私ですが？」
顔色を伺うように警戒しながらそう聞くと、お客は僕を見つめ出した。
僕をゆっくりと足のつま先から頭のてっぺんまでを舐めるように鋭い目つき。
怖い。
人間から見つめられただけでこれほど狂気を感じたのは初めてだ。今日は初めてのことが多い。
「……俺はお前の仲間、半妖の類だ。」
真っ直ぐな視線、頭がおかしいのか疑ってしまうじゃないか。
先ほどの異様なほどの恐怖はこいつが人間じゃないから起こった……ということなら滅多に恐怖を感じない僕が恐怖を感じたのも説明がつく。
「種族は？」
「……狐だ」
思いがけないことを聞き眉を上げる。
なぜこんなリアクションを取っているかというと、単純に狐は強いからである。
もし僕が戦ったとしても勝つ確率は半々、つまり死亡する可能性があるのだ！
まあ、僕が言っているのは狐の最上級の九本の尾がある九尾の事ですけどねー。
「失礼ですが、姿を見せてもらえませんか？」
「ヤダ」
さっきまで僕の質問に少し間をあけて答えていたくせに、いきなり即答してきた。
そこまで嫌な事じゃないはずなんだけどなあ。
ちょっとだけ興味が湧いてしまった僕が悪かったのだ。
狐の変装を解き本当の姿を見ようと単純な魔法を狐に向かって掛けた。
「……あ」
九本の尾を持ち落葉のやうな色をしたその獣、九尾狐だ。
この状態はちっとも笑えないのに乾いた笑いが口から溢れる。
これ多分、狐の養分として喰われるな……。
自分の顔は見えないけど、多分青を通り越して青白くなっているだろう。
「……」
これが無言の圧力というものか、猛獣の前に生身で放り投げられた人の感情がわかった気がする。
「貴様、礼儀というものを知っているか？」
狐は僕に子ウサギ掴む鷲のような眼差しを向ける。
こんな早くに喰われることを覚悟することになるとは……短い人生だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 89人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アルル・エリ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2018年12月26日 20時
