年下上司に振り回されています-fmkn

風磨09 ページ37

…


「今の時代、名前を呼ぶのもセクハラになりかねないんですよ。」


「それが？」


「でも別に私、今日初めてまともに話す男性にいきなりよびすてにされてもヤキモチ焼いてくれるいい人いないからいいんです。」


「ふっ。で？」


「でもなんかめちゃくちゃ癪なんで、私も菊池さんのことよびすてしますね。」


「・・・あ？」


「風磨。で、合ってます？」


「は、なんだお前。」


「お前じゃないです。」


「・・・A。」


「いくら私のこと嫌いでもいいですよ。でも仕事はびったりと隣にくっついて覚えさせてもらいますから。」


ついに言ってやったわ。

今日一日ずっと喉まで、いいや、舌先まで出かかっていたことを言ってやった。

しかも無表情を貫いてやった、多分。

ヒステリーになったら鼻で笑って終わりにされそうで必死に耐えた。

どうだ、ぐうの音も出ないかよ。


じっと顔色が変わる様を見てやろうと瞬きすら惜しんで見つめる。

するとゆっくりと菊池さん、じゃなかった、風磨が口の端を持ち上げた。

表現するなら、にやりと笑うっていうのがピッタリな口元。


「へぇ。いんじゃない？」


なんだよ。

焦って顔を赤らめて声もでないでいてくれたっていいのに。

やっぱりこの男、肝が据わってる。

おもしろくない。


「じゃあまずいいですか？さっき片付けてた資料で気になることがあって。」


「ふーん、どこ？」


おもしろくなくておもしろいじゃん。

菊池風磨、覚悟して。

これからの１ヵ月間、最後まで食らいついてやろうじゃない。

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