年下上司に振り回されています-fmkn

風磨02 ページ30

…


「おい、出かけるぞ。」


「は、はい？」


「今日、顔合わせだから。」


それだけ言ってジャケットと鞄を掴んでスタスタと部屋を出て行こうとする。

ワンマン過ぎるでしょ！？

私はまだあんたに顎で指された席に腰かけてもいないんだけど？

って言ってても仕方ないし仕事だからもちろん付いて行くけどさ。

鞄の中に名刺入れが入っているかだけ確認して後を追った。




駐車場に着く手前でようやく追いついた。

歩くの早いなぁ。

少し息が上がる。

菊池さんがジャケットのポケットからキーを出して車のロックを解除した。

それからその鍵を私の顔の前にずいっと差し出した。

パカパカと光った奥のシルバーの車を見て、あぁあの車かぁなんて呑気に思っていたけれどさ。

ですよね、私ですよね、運転。

つい先日までの癖で助手席に乗るところだった。

危ない危ない。

菊池さんは何も言わずに後部座席へと乗り込んだ。

重役かよ。

はぁ。気合い入れないと、これから大変だ。



受け取った鍵をポケットにしまって運転席へ。

とりあえずナビをセットして「出発します」と声をかけて車を進めた。

バックミラーで見る後部座席の菊池さんは真剣な表情で書類のチェックをしているご様子。

難しい人、だなぁ。

これからも全然しゃべってはもらえない感じなのかな。

でも仕事を教えてもらえる、なんて贅沢なんだよね。

自分で見て掴むしかないんだ。

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