年下上司に振り回されています-fmkn

健人17 ページ20

…




「健人さん、お腹すいてます？」


「や……うん、すいてる。」


「私もです。あの、菓子パンで良かったら。」




朝からバタバタしてて何も食べてなかったから。

クリームパンとメロンパン。
地域限定の文字に弱い私はつい買ってしまったんだよね。

両方手に持って、健人さんに見えるようにかざしてみる。




「健人さん、好きな方取ってください。」


「えっ、いいの？」


「昨日ご馳走になったんで、そのお返しと言ったら少なすぎますけど。」


「まじか…ありがと、じゃあ俺クリームパン。」




ふふ。


いただきまぁすって言って幸せそうに頬張ってる顔見てると、上司とは言えやっぱり年下なんだなって思う。




「…Aちゃん、会社に着いたら打ち合わせしよ。前回を越える内容にして驚かせたいし。」


「はい。契約、いただきたいですね。」


「絶対いい返事がもらえると信じる。」


「はい。」




健人さんの言葉は魔法みたいだ。


言われると、その通りになるって気がしてくるから。




「…健人さんってホントにいつもポジティブで、え？」




寝てる。



食べ終わったクリームパンの袋、手に握りしめたままで。


よっぽど眠かったんだな…ってもしかしてあのあとも仕事してたとか？

健人さんって…。




「ホントに、情熱的ですね。」





“Aちゃんの力貸して”


“必ずオセロチョコをナンバーワンにするんだ”




いつも。真っ直ぐで偽りなく。駆け引きしてるようで直球なんだ。

寝顔も凛々しくて、意思の強さが伝わってくる。




途中で緩くカーブして車体が揺れたとき、健人さんがこてんって私にもたれかかってきた。



無防備に、預けてくれるんですね。



甘い香りと、ちょっと高めの体温が伝わってきて。胸が、とくんって音をたてる。


私、この出張で、今まで知らなかった健人さんの一面をたくさん知った。



頼りになる上司であり、純粋で無邪気なかわいい男の子。



異なるふたつの魅力、って。
オセロチョコと健人さんが重なって見えた。

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