ひとつの秘密

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【Fuma side】




｢オーナー、店辞めさせてください｣




｢お前……、何言ってるか分かってんのか？｣








Aを見送ったあと、俺は店に来ていた。







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俺が大学に入学して上京してきた頃、親父が借金を作って突然消えてしまった。






田舎に残された母や兄弟達のもとに戻ろうとも考えたけど、夢を叶えなさいと戻ってくることに母は反対した。








必死に自分の生活費や学費、そして実家へ送る仕送りのためにバイト漬けの毎日を送っていたけど、大学生が稼げる額なんてたかがしれているのが現実。








20歳になったと同時に俺は夜の世界へ飛び込んだ。








その時に俺を拾ってくれたのがこの店のオーナーだった。 親身にしてくれて、俺がナンバーワンに上り詰めた時にはマンションまで借りてくれた。







もちろんお金はオーナーもちで、






だけど、売上は下げずに且つナンバーワンを守り通すことを条件として。









おかげで俺は、親父の借金返済分も十分に稼ぐことが出来たし、生活するには差し支えないくらいだった。








オーナーが拾ってくれた恩があるから、この店には貢献していきたかったし、






かけ持ちしていたバイトもやめるつもりだった。







なのに、そんな時に新しく入ったバイトの子に俺は惹かれてしまったんだ。








自分のしていることが恥ずかしいと思うようになったのはこの頃から。





Aの思いに気付いていながらも、俺には受け止めてやれる権利なんてなかったのだ。









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