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「お客さん、運が悪いね」
タクシーのおじさんは、
そう言って、バックミラー越しに
私を見て、笑った。
「こんな日に空港に向かうだなんて」
『こんな日？』
「なんだ、知らないの？
外、見てごらん」
道ゆく人が、
みんなスマホを空に向けていた。
子供ははしゃいで、
カップルは微笑み合い、
サラリーマンのおじさん達は
寒そうにコートに手を突っ込んでいた。
.
.
.
『雪、』
「１１月の下旬だっていうのにね。
今年の初雪だよ。
お客さんの飛行機、
欠航にならないといいけどね」
ってタクシーのおじさんが
そう言って、また柔らかく笑って、
ラジオをつけた。
“今日のニュースをお伝えします。夜9時前後から降る予定の雪が、夕方の6時に降り始めた模様です。今年の初雪ということですが、韓国では初雪の日に告白すると、幸せになるというジンクスがありますね、今日の夜に告白する男女が多いかもしれませんね”
ぼうっと窓の外を眺めて、
ラジオの声を聞き流した。
私はテヒョンと過ごした７年間を
想った。
穏やかでありきたりな毎日は、
テヒョンが私の前から去った今考えると、
とんでもなくキラキラしてた。
クリスマスには、
私が会社の食品のサンプルのチョコレートを
大量に持ち帰ったからって、
テヒョンはサンタの格好をして、
同じマンションに住む子供に
分け与えてた。
初雪が降った日は、
いつも私たちは仕事で。
上司にバレないように
窓から雪の写真を撮って、
テヒョンに送ってた。
写真に既読が付くと、
テヒョンも今、同じ空を見上げてるのかな
って思って、ソワソワしてた。
７年間の全てが、
順調だったわけじゃないし、
気まずい時期も、
なんで理解してくれないのって
イライラした時期もあったけど。
グレーや、黒ばっかりじゃなかった。
全体を見ると、
私達の７年間は美しい絵のようだった。
「はい、お客さん。着きましたよ、」
車から降りると、
さっきチラチラと降っていた雪が、
もっと降っていた。
とりあえず、
釜山行きのゲートに向かえばいいかな。
まさか雪が降ると思ってなかったから、
ヒールの高いブーツを履いていた。
ほおに雪があたる。
それでも、構わない。
私は走った。
.
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chi134340(プロフ) - はじめまして 久しぶりにこちらの作品を読ませていただきました。初恋の切なさ，儚さに胸が締めつけられました。大好きです。こんな素敵な作品を書いてくださってありがとうございます。これからも応援しています。 (8月28日 20時) (
レス) id: 2f5b0c03f1 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - この作品本当に素敵ですね、マジで涙出そうだったけどちゃんと耐えました！（なんの報告かわかりません） (8月10日 11時) (レス) @page36 id: 6f7661d487 (このIDを非表示/違反報告)
やきにくさん(プロフ) - かれんさん» かれん様 そのようなニュースがあったんですね…。世間知らずでごめんなさい、、多少海外の映画を参考にしましたが、完全フィクションです。 (2022年8月22日 22時) (レス) id: a5db14d0d3 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 日比谷線の脱線事故を題材に書かれてますか？？ (2022年8月20日 10時) (レス) @page36 id: c19a77d80d (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 誰の視点にたっても切なくて苦しくて、儚い。絶対に正しい答えなんてないけどほんとにみんなに幸せになってもらいたいと思いました。涙腺崩壊、大好きなお話です (2022年6月22日 1時) (レス) id: c19a77d80d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やきにくさん
| 作成日時：2020年12月28日 23時
