YG ページ9
YG「２人前、の分量教えてんじゃねーよ、
どうすんの、これ」
『あまった豆腐ハンバーグは、
明日のお弁当にしなよ』
ひひ、って悪気なく笑うA。
YG「いただきます」
幽霊のAは
食事が食べられないらしい。
食べてる俺をまじまじと
見つめては、
やっぱり不味そうに食べるね、
って言いながら目尻を下げて微笑んだ。
YG「そーいや、
結婚してから一緒に飯食うのって
数えるくらいしかないな」
『そーだよっ！
仕事仕事っていっつも断って！』
YG「だから先に寝てていいって言ったし
先に食べとけって言ったじゃん」
『それじゃ意味ないじゃん』
って睨むけど、
別に怖くも何ともない。
Aがいた、ころ。
家にある冷蔵庫はパンパンだった。
元栄養士だったからか、
たくさんの健康食品的なものまであって。
馬鹿みたい、そんなんばっか買うやつって
騙されやすそう、
って言ったことを覚えてる。
『ねぇ、ユンギ』
雷の音はさっきよりも強くて、
YG「なに」
こんなひどい台風なら、
停電とかになりそう、
そんなこと考えて。
『なんで私の物、捨てないの？』
まっすぐに俺を見る目線が、
嫌で、目を逸らした。
YG「別に、どうしていいかわかんないから。」
嘘だった。
ただ、そのままにしておきたかった。
YG「お前んとこのご両親に気に入られてないから、連絡もつかない。Aの荷物のこと、
話したかったんだけど」
Aの葬式の日。
俺はAのお義父さんに
おそらく思いつくかぎりの罵詈雑言を
浴びせられた。
最後には
“だからわたしは、
君と娘の結婚に反対だったんだ、
君がわたしの娘を殺したんだ”
そう、言われた。
俺が返す言葉を思いつかなかったのは、
俺のせいとか誰のせいとか、
そんなとこまで頭が回ってなかったからだ。
Aが死んだ。
遺灰を見ても、
Aの死を、信じられなかった。
家に帰って、ベッドに入ると、
すぐそこで寝てるAがもう居ないなんて、
信じられなかった。
『お父さんもお母さんもユンギのこと、
勘違いしてるからね。
ほんとうはすごく優しい人なのにね』
って俺の頭を撫でた。
なんだか泣きそうになった。
だって、
『あぁ、そっか、
私もユンギに触ることができないんだね、』
頭を撫でられても俺は何も感じなかった。
Aはいつものように困ったように笑った。
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作者名：やきにくさん
| 作成日時：2021年7月31日 22時
