JN ページ20
『私、ソクジンさんに
言ってないことがあって』
JN「んー？」
助手席の彼女は、
窓の外の景色を見て目を細めた。
『ユンギとお見合いして、
たまたま会社同じだったって嘘です。
ずっと前から私、
ユンギのこと知ってて。』
JN「………代理、って営業課のところには
絶対来ないから、知らなかったんじゃないの？」
『ある日エレベーターで一緒になって』
きっとユンギも知らないであろう話を、
どうして彼女は僕に、
打ち明けてくれたんだろう
『”何階ですか？”って聞かれて、
“6階です”って答えたら、
６階のボタンを押してくれて。
“6階ってことは営業の方ですか？”
って言われて、”はい”って答えたら、
“大変かもしれないですけど、頑張ってください”
って』
JN「…………まさかそれだけで？」
『好きになっちゃいました、』
って、
照れ臭く笑った。
『それから代理のことを調べ上げて、
両親が出してきたお見合いの方々のところに
代理の情報を混ぜて、親を納得させて
ようやく結婚できました』
JN「ユンギ、それ知ってるの？」
『知らないです。
知られたら、必死な奴って思われて恥ずかしいから』
JN「そこまで必死に追いかけてくれたんだって、
もっと君のことを好きなると思うけど」
『…ポジティブですね、
ユンギはあれこれ考えて負担に思っちゃうんじゃないかな。変なとこ優しいから』
って、また目を細める彼女に、
僕は胸が締め付けられる。
『送ってくれてありがとうございました、
また、会ってくれますか？』
JN「うん、また連絡してね、いつでも」
『はい！』
車から降りる彼女の後ろ姿を
しばらく見つめてしまう癖は
やめようと思ってもやめられない。
いつでも会おうと言ったのに、
彼女はそれから
僕に会うことを避けた。
僕が彼女に会ったのは、
この日から一年後のことだった。
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作者名：やきにくさん
| 作成日時：2021年7月31日 22時
