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ちらりと出久の顔を窺うと依然として厳しい表情を浮かべていた。何か言いたげな目をしてる。
「Aちゃんはかっちゃんの為って言うけど、それは自己満足じゃないの？かっちゃんから直接嫌だって言われた？」
「…言われてない」
出久のその言葉がひとつひとつ心に染み込んで、溶ける。
「それって結局Aちゃんが都合の良い言い訳を作って、目を瞑ってるだけだよ」
きっぱりと言い切った出久の姿に笑みが零れる。すっかり大きくなって。
「言うようになったね」
「え、あ、…偉そうだったらごめん。でもこれは本当に思ってること。Aちゃんにはいつも助けて貰ったから、こんな事で後悔して欲しくない」
カチリとばらばらになっていたパーツが合わさったような気がした。
出久はもう私の気持ちを確信しているんだろう。その上でそれを引っ張り出そうとしているんだから 私が自分の偽りを話したって意味ないよね。
本当は私は勝己の為なんて思ってない。
いつだって私は勝己に引けを取らない程の自己中野郎で、そんな奴がこんな時にだけ誰かの為なんて言ったら…本当だ、都合が良すぎる。
ずっと不安でいるのがその内嫌になって、でも私には度胸が無かった。だから勝己の事を思ってる風に装って自分自身の心に向き合う事をしないで、背を向けていた。
そして恋人を想って身を引く健気な女の子、なんて無意識に自分を立ててたのかもしれない。
だから、つまり…
「逃げてたんだ。弱い自分から、勝己から」
出久には敵わない。私の嘘をすぐ見抜いちゃうんだから。
「それが分かれば今は充分だよ。行こう！」
「え？どこに？」
「かっちゃんのとこ！」
すると突然出久は私の手を取り廊下を駆け出した。
慌てる私を余所に出久はどんどん進んでく。長い道のりを走って階段も登って目の前のドアを開けると、そこは屋上で…貴方がいた。
「…なんでテメェらが」
両手をズボンのポケットに突っ込んで私と出久を忌々し気に見やる。その視線に耐え切れなくなった私は俯きスカートの裾をぎゅっと握った。
「じゃあ僕はこれで」
救いを求めて出久を見ると出久はそのまま体を屋上から降りる階段の方へ歩いて行った。「逃げちゃ駄目だよ」と笑顔と言葉を残して。
私が声を発しない限り此処にあるのは静寂。そして気まずさ。
言わなきゃ。深呼吸して、腹を決めた。
「私ね、勝己の隣にいるの凄く嬉しかったし、楽しかったんだ」
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にこらす(プロフ) - 水｡さん» ありがとうございます。もっともっと読者が感情移入出来るような作品を目指していくので、これからもよろしくお願いします！ (2018年3月18日 21時) (
レス) id: 22756add6a (このIDを非表示/違反報告)
水｡(プロフ) - 素敵な話ですね｡読んでいて涙が出そうになりました｡続きが気になります!更新頑張ってください!! (2018年3月18日 17時) (レス) id: 84c88a76d3 (このIDを非表示/違反報告)
にこらす(プロフ) - きゃんでぃーさん» コメントありがとうございます！きちんと夢主の葛藤が書けているか不安ですがそう言ってくださってとても嬉しいです！頑張ります (2017年12月29日 20時) (レス) id: 22756add6a (このIDを非表示/違反報告)
きゃんでぃー(プロフ) - 読んでいて切ない気持ちでいっぱいになります。これからも頑張ってください！ (2017年12月28日 21時) (レス) id: 40f7ee34c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にこらす | 作成日時：2017年12月25日 0時
