君の音【轟焦凍】 (ページ6)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:3,910 hit

005 ページ6

手渡されつける。
すると音が、すっと引いた。

発目さんの製作に熱中する音、好奇心が沢山の方向に向いている音、パワーローダー先生の少し疲れている音、全てが遠くなる。

驚きで無意識に息をのんだ。

「すごい…」

確実に今までの物とは音の聴こえが違う。
思わず漏れた本音に、発目さんはゴーグルを額に押し上げ満足そうにニヤリと笑った。

「なにせ私が作ったベイビーですからね！」
「正確には、私と発目のね」
「…２人で作ったんですか？」
「初めは私だけのつまりだったんだけど、発目が聞かなくてね。まあ性能は問題ないと思うから」

もう一度ヘッドフォンをまじまじと見る。
今まで私がしていた物とサイズや重量は変化ないのに、これ程性能が良くなっていることに感動を覚える。

「それ実はただ音を遮断してるんじゃなくて、君の個性を薄めてるんだ」
「？どういうことですか？」

するとパワーローダー先生はパソコンを起動させ、ヘッドフォンの仕組みの図を出して丁寧に説明してくれた。

「分かりやすく言うと、君の個性が発動しているのを察知して、それを無効化しようとヘッドフォンが作動するんだ。
だから君は個性による人の音が聴こえなくても、車のブザー音や鳥の鳴き声など自然の中に存在する音は普通に聴くことができる。
つまり日常生活に支障はないよ」

そんな夢のようなものが存在するなんて。
今まで嫌ってきたこの個性と、ついにおさらばできる日が来るなんて。雄英すごい。

これからは東京にだって行けるかな。
誰かと楽しくお喋りできるかな。
この前誘ってくれた女の子達と食堂でお昼食べれるかな。
やりたい事を我慢しないでできるのかな。

「あり、がとう、ございます」

私も人並みの生活を送れるのかな。