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「A来てたんかい」
轟焦凍が帰って暫くしたあと、リカバリーガールが戻ってきた。
いつも通り腰を曲げ杖を使って。
「もう大丈夫なのかい？」
「はい」
事実、気持ちが悪いほどのあの音も既に収まっていた。
「…やっぱり私リカバリーガールの音好きです」
「そりゃよかったね」
手渡されたグミをもきゅもきゅ食べながら、ヘッドフォンを装着していない為、普段より大きなリカバリーガールの音楽に耳をすます。
さすが養護教諭というべきか、私を害する音は現れない。
その為リカバリーガールのいる保健室は、すっかり私の逃げ場になっていた。
入学式でさっそく頭の内部で地割れが起き顔が青くなった私に、リカバリーガールは真っ先に気付いた。
そして私の個性の話を聞き、「辛くなったらいつでも来ていい」と私に居場所を与えてくれた。
入学してから数ヶ月しか経っていないというのに、保健室に来た回数は既に数え切れないほどになっている。
それでもリカバリーガールは嫌な顔ひとつせず、対応してくれる。
まだ期間は短いとしても、休みがちだった小学校や中学と違い私が根気強く毎日学校に来れているのはリカバリーガールのお陰だと言っても過言ではない。
なによりリカバリーガール以外の教師もそうで、個性に理解のある雄英に来て正解だった。
この学校を勧めてくれた両親に感謝感謝。
「そういえば前にサポート科に頼んだヘッドフォン、届いたよ」
「本当ですか！！！」
ボールペンを口元にあて、ふと思い出したように言うリカバリーガールに、私は自分でもおどろくほど反射的に大きく乗り出した。
私がほぼ毎日保健室に通っているという報告を受けた校長が、直々にサポート科に防音性が非常に優れたヘッドフォンの製作を依頼してくれたらしい。
「ただ微調整を行いたいから本人が来てくれってさ」
「わかりました」
見知らぬ場所に行くのはあまり気が進まないが、この際背に腹はかえられない。少しの我慢だ。
雄英は校内がバカでかいのでリカバリーガールに書いてもらった地図を手に、意気揚々と保健室を飛び出した。
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作者名：にこらす | 作成日時：2018年8月13日 18時
