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いつもの席に座れば、やはりいつも通り彼女が目の前に座る。
「…名前なんて言うんだ?」
「轟くんから話を振ってくるなんて珍しい。どうかした?」
言葉の通り彼女は、心底驚いたという表情でこっちを見てくる。
確かに普段は彼女が話しかけてくるまで基本的に自分からは口を開かない。珍しいといえば珍しいことだろう。
「クラスの奴に聞かれたんだ」
「へえ」
紹介してくれと頼まれた、とも伝えれば任務終了。
彼女が承諾しようが、しまいがもうこちらには関係ない。
上鳴に泣かれても知らないふりをすれば良い。
「誰?」
「上鳴電気」
名前を告げれば納得した表情を見せる。知っていたのか。
「断っといて」
「いいのか?」
「その人普通科の間でもチャラ男で有名なの。私チャラい人好きじゃないし」
なるほど。有名は有名でも思っていたものとは違っていた。
それにしてもこの短い期間で違う科にまで既に広まっているとは、どれだけだろう。
「前に実際に会って話すまでその人の印象を決めつけない、とか言っていなかったか」
「お、覚えてくれていたの」
今度は嬉しそうに笑っている。
「たまたまだ」
「乙女の気持ちは変わりやすいってね」
そう言って彼女はへらりと口元を緩めた。
カレーがなぜか頰に付いていて、呆れしかない。アホだろう。
「でも私のこの世界大好き!の気持ちは変わらないよ」
「いい加減変わっても良いと思うが」
何回その台詞を聞いたことか。正直耳にタコができている。
そんなこちらの気持ちを知らないのか、知ってわざとなのか…確実に後者だろう、彼女は話を続ける。
「だってそう思い続けたらきっと、そのうちいいことが起こるかもよ」
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作者名:にこらす | 作成日時:2018年4月7日 23時