On ne badine pas avec l'amour. ページ18
異国の地を気の向くままに足を進める。シャッター音に振り向くとスマホを向けたチッタポンが笑んでいる。
A「良い写真だった?」
TN「うん。御伽話に出てくる妖精みたい」
出会ったときからチッタポンはずっと妖精だと恥ずかしらずに賛辞を送ってくれる。それは私の大きな自信にも繋がっている。するりと彼の腕に己の腕を巻き付けもたれかかる。
A「好きよ」
TN「僕も」
髪に口づけた彼は甘えている私の姿もスマホに納める。お正月に会い、その2週間後にまた会えた今回が特別なのだ。次はいつ会えるか分からない。それでもお互いにお互いを放したくなくて。
TN「よく恋人と会えなくて我慢出来るねと言われたよ」
嘲笑を含んだ言葉を口にするチッタポンを見上げる。その目は真っ直ぐに先を見据えている。指先を絡ませあい散歩を再開する。
私もよく言われるその言葉の続きは「浮気してもバレないね」だ。浮気するくらいなら別れるべきだ、というのは私の考え。特に遠距離恋愛で特殊な職業同士である私たちは会える回数は限られている。それでも別れない理由はこの先の人生も一緒に居たいから。
TN「Aちゃん以外に勃たなくなったのに」
A「……お昼から止めて」
ばしんっと腕を叩くとケラケラ笑う声に溜息を吐く。
驚かれるが男性社会に居るのに下世話な話への耐久度は低い。女が居るから、しかもそれが唯一の女の後輩、というバイアスが掛かっているのか、下ネタ系の話は飲み会でも出ない。他業種の人が振って来てもさらりと交わしてくれる先輩や同期、後輩たちに感謝しかない。
A「そういえば2月に仕事でタイに行くの」
TN「ほんと?母さんたちがAと会いたいって言ってたよ」
A「まだスケジュールが確定じゃないんだけれど、どこかでお食事出来たらいいなと思ってる」
TN「そうしてあげて。とっても喜ぶよ」
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作者名:はながたり | 作成日時:2022年12月13日 23時