輝く月のように 3 (ページ38)

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夢と現の狭間ページ38

岩本「Aはさ、絶叫系乗れるの？」
A「乗れます！」

ビシッと手を挙げて発言したAの恰好もパンツスーツ。周りを囲む野郎共もスーツでこの場では若干浮いている。

佐久間「とりあえずさ、ファストパス取ろうぜ！センターオブジアース乗りてぇ」
阿部「…」
深澤「佐久間ぁ、隣の阿部ちゃんの顔見てみ？死んでるぞ」
佐久間「わははははは」
A「阿部ちゃんは苦手なの？」

心底嫌そうな顔で頷く阿部ちゃんにAは苦笑を漏らす。

マップを手に歩き出すとキラキラした目で当たりを見回すAはまるで初めてディズニーに来た子供のよう。

深澤「待って、Aってディズニー初めて？」
A「東京は初めてです。カリフォルニアとパリには連れていってもらったことあります」
渡辺「相変わらずワールドワイド」

ショップを素通りする男たちを他所にAは名残惜しそうにショップを見てる。

深澤「もしかしてカチューシャしたかった？」
A「っ…ううん。お土産買いたいなって」
渡辺「帰りに寄るだろ。前見て歩け」

センターオブジアース、インディジョーンズなど絶叫系をメインにアトラクションを制覇していく。小休憩とベンチに腰掛けて男気じゃんけんに勝った佐久間と翔太が食料の買い出しから帰ってくるのを待っている。

宮舘「A、足痛いんでしょ」
A「え？」
宮舘「さっきから歩き方おかしいから。靴擦れした？」

恥ずかしそうに頷くAの足元に4人の視線が集まる。スーツに合わせて黒のパンプスを履いているが、Aがパンプスを履いてる姿は初めて見た。

A「ごめんなさい」
岩本「謝ることじゃないし。絆創膏持ってる？」
A「うん…」

鞄から絆創膏を取り出したAが右足のパンプスを脱ぐと踵が真っ赤になり皮が捲れていた。うわぁ、と思わず声が出てしまう。これは相当に痛かっただろうに。それと同時に彼女はまだ自分たちに遠慮してることをはっきりと目の当たりにさせられた。

痛いとも、絆創膏を張りたいとも言わない。グループを組んで2年近くなるのに6人と1人の溝を埋めることが出来ない。溝があることを全員が気付いているのに見て見ぬ振りをしている。

佐久間「え、なになに？この雰囲気」
阿部「Aが靴擦れしちゃってて」
渡辺「まじ？」
A「絆創膏張ったから大丈夫です。それより、ご飯買ってきてくれてありがとうございます」

そして、今もまた7人が溝から目を反らした。