はなびらダイアリー (ページ17)

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シトラスの香りは鼻につくページ17

出会ってはいけないひとに出会ってしまった。
それは直感でもあり本能でもあったような気がする。気がするというと何となく頼りなく感じるのだけれど気がすると言う方がこの場合確実性がある"気がする"。

そのひとは特徴的な香りを身につけていた。けれどそのひとは周りに認知されることをあまり好んではいなかった。
どうしてそんな香りをつけるかなんて馬鹿なことは聞かない。私ももう大人である。どうせ昔の恋人のことを忘れられないだとかそういうことだろうとそう思っている。

そのひとはよく優しく笑うひとだった。ほかの人が呆れるような話をしても、聞き流すような話をしても、優しく笑って聞いてくれた。けれど相槌しかうってくれず、話に対する質問も感想もなかったからただほかの人と同じように聞き流していただけかもしれない。けれど私はそうは思っていない。

「ねえせんせい、」

私はそのひとを先生と呼ぶ。本当は名前を呼びたいし名前を呼んでも誰も咎めない関係である。
けれど肩書きのせいでどうしても一般的に咎められてしまうだろうというのが私たちの見解であった。
何、と振り返った"先生"であるそのひとは煙草を咥えて妖艶に微笑んでいた。

嗚呼、もうどうしようもなく胸が高鳴ると言うのはこういうことなんだと実感する。
すきです。ふと口にしてしまえば嗚呼しまったと言う顔をしてしまう。自分でも解った。
私はどうしようもなく思っていることが顔に出てしまう性格である。ということは思い返せば先生のことを好きだと想っているときはそれに近しい顔をしているのであろう。嗚呼。

「何のマネですか気持ち悪い。女子生徒の真似事をしても貴方のことを可愛らしいとは思えません」

すみませんなんて頭を掻きながら笑う。
先生の人気なところは甘いルックスに似合わず素直じゃあないところだ。