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やさぐれ人魚は何思ふ ページ15

4月に入社したひとはとても気味の悪い男だった。
顔は整っているし、スタイルだっていい。人付き合いも良ければ礼儀もいい。仕事だって頼まれたことはきちんと要望通りにこなすし、頼まれていないことだって気づけば率先してする。アイデアだって出るし学歴で人を見定める訳では無いが、出ている大学だって名門校だった。

その男は綺麗すぎる。綺麗すぎてしまったのだ。






やはり仕事のできない女の考えることは同じであの男の周りに本当はどれほど汚いものかというようなその人の落とした甘いものに群がる蟻のようになった。どうにかしてあの男を手に入れたいと思っているらしい。まるで生きのいい魚だ。私からすれば正気の沙汰じゃない。
けれど将来有望容姿端麗財力もある男を手に入れた暁の周りの人間からの羨望の眼差しを受けたいのだろう。そんなことなら今まで馬鹿みたいに媚びて真面目に働きもしないで手にしたその価値のない金で整形でもして少しだけでもテレビやらネットやらという媒体に顔を出せばいい。それで満足だろう。

そんな考えさえもないような低脳なやつらのあの自信はどこからくるのだろうか。どうしてあの女たちは自分があの男を落とせると思っているのか。そんな魅力一つもないのに。


ある日ほとんど仕事を共にしないあの男と一緒に仕事をするハメになった。あの女たちに何を言われるかわからない。手は動かさないくせに脳の不必要にも程があるような一部分だけを使って口を動かし文句だけを吐いていくあの女たちに。
面倒だから愛想笑いでもしておいてやろう。


あの男は私と2人きりになった途端、いつもあの女たちに振りまいているような顔からは想定できないような闇を持つ顔つきになって言った。


「生きのいい女は大嫌いだ。」


私は片手でその触れたら消えてしまいそうな程白くて儚い肌に赤みが残ってしまいそうなほど頬を力強く掴んで顔色ひとつ変えずに言う。


「先輩には敬語を使うものよ。」

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作者名: | 作成日時:2015年8月15日 20時

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