戦争屋の男達【wrwrd!!】 (ページ2)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:1,071 hit

この男、異臭につきページ2

僕が政府の緊急募集に応募したのが一ヶ月前。
合格通知が来たのが二週間前。
新居で生活する為に物を揃え始めたのが一週間前。
二週間前に通知が来て、正直家具とか引越し代金とかの心配はしたが、荷物がゲームとスマホと部屋着と【ﾋﾟｰｰｰｰ】だけなのと、よく読んでなかった合格通知に『各人の使える部屋には備え付けのベッドとソファ、テレビ、パソコンデスク、パソコンがあります。』の記載があったので、家具類は買わなくて済んだ。引越し代金も、近くのスーパーで貰ってきたヨレヨレのダンボールでなんとかなった。結局かかった金は家具や服の処理代、新しい服代と日用品代だけだった。
何故処理？と聞かれるかもしれないが、ゴキブリ、カビ、キノコ、雑草、使い終わって放置された【ﾋﾟｰｰｰｰ】と共同生活してた部屋で使ってたものやからね。僕ほどの異臭ではないけど、軽くアンモニアの臭いはしている。とても臭い。

そして、今日。晴天の日曜日。ついにあの日がやってきた。

施設に初めて行く日である。

因みにその施設が何処にあるかなど知らされていない。
一抹の不安が過ぎる。

政府から指定した時間に迎えが来ると書いてあったので、今までお世話になったアパートの前で、一つだけちっちゃいダンボールを抱えて、ひたすら待つ。大家さんが安堵とも不快とも取れない表情で窓越しに僕を見ている。大方｢やっとあいつが出ていってくれた。これより嬉しいことは無い。｣って気持ちと｢あの異臭部屋どうすんだよ。価値下がるだろ死ね｣って気持ちだろう。心配するな。マニアックな匂いフェチもこの世には多数存在している。

指定した時刻を少し過ぎた当たりで、黒塗りのいかにもな車が僕の前で止まる。運転席の窓が下がる。サングラスとスーツを身につけたまるで逃〇中のハン〇ーのような男が顔を覗く

｢ニックネーム、鬱先生様でしょうか。｣

｢えっあっそうです。鬱です。｣

｢手荷物はそれだけでございましょうか。確認でき次第後部座席にお乗り下さい。もうここには戻れませんよ。｣

｢了解ですー。｣

そう言って、扉を開けて、いつもより丁寧に乗り込む。傷つけたら大変やし。

｢出発いたします。｣

こうして、僕のHoi生活が幕を上げた。

最後にバックミラーからちらっと見えた大家さんの嬉しそうな顔と、真っ青な顔で嗚咽し続けながらも送り届けてくれたこの運転手さんの顔はいつまでも忘れないだろう。やはり狭い密室で僕と二人きりは刺激が強すぎたようだ。