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伊野尾「Aはそうやって隠すのが上手くなっちゃったから、
今更変えられないのかもしれない。それでもな、」
今まで俯いて聞いていたけど、
いのちゃんの声が近くなった気がして、
つられるように上を向く。
怒っているわけでも、叱られているわけでもない。
伊野尾「俺らは心配なんだよ。」
それでも、なんの迷いもなく告げられるその言葉に、
私は胸の奥が痛くなった。
裕翔「うん、そう。そこを真っ直ぐ行ったところに___」
隣で裕翔が誰かに電話をしているのが見える。
おそらく涼介だろう。
心配をかけてしまった。
「私、間違ってたのかな…?」
ポツリとこぼれた疑問を
いのちゃんが「ん?」と優しく拾う。
伊野尾「んー間違ってるとは思わないよ。
実際、Aのそういう細かな気遣いに
俺たちは何度も救われてきたし」
「そんなことはないと思うけど…」
伊野尾「ある。まあだから、そのAの優しさに
甘えすぎてきた俺らのわがままなのかもしれないけど、
それでも心配なんだよ。
だから、Aはもっと自分を大切にしな。」
目の奥が熱くなる。
ダメだ、泣いたらダメ。
せっかくの楽しい雰囲気を壊したくない。
そんな私の気持ちを察してか、
ふっと笑ったいのちゃんが私の手にしているそれを指差す。
伊野尾「ほら、早く食え。もう溶かすなよ。
それともアーンしてやろうか?」
「結構です!」
かろうじて溢れなかった涙が笑って答えるのと同時に、
少しこぼれたけれど、私は気づかないふりをしてかき氷を口にした。
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しばらくして。
涼介「A!」
血相を変えた涼介が大慌てで走ってくるやいなや、
私をガバッと抱きしめた。
涼介「ごめん!」
「なんで涼介が謝るの。」
涼介「裕翔から、Aがナンパされたって聞いて、
俺が一人にしたせいだって」
「違うよ。私が自分から一人で買いに行ったからだよ」
伊野尾「はいはい、お二人さん。
ここは家じゃないんだよ。場所を変えようね〜」
屋台前のこのスペースは人目が多い。
それにいち早く気づいたいのちゃんが、
私たちをまとめてテントの方へと引き連れる。
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ありちゃん(プロフ) - 久しぶりに更新してくれて嬉しいです!わたしも完結寂しい、、、paradeのメイキング期待したいです、、、!涼介にもっと嫉妬して欲しい(照) (2020年6月14日 15時) (レス) id: 7f4e14822e (このIDを非表示/違反報告)
miko - I love you (2020年5月6日 15時) (レス) id: e521ced911 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 完結してしまうなんて残念です。paradeのツアーの様子とかも書いて欲しいです♪どんな形であっても、最後まで応援します!! (2020年1月25日 13時) (レス) id: 6ffe3ba49e (このIDを非表示/違反報告)
モリノ ツバキ(プロフ) - 完結してしまうんですか?とても面白いのでもうすぐ終わってしまうと思うと残念です。かぐや姫ロスにならないか今から心配です! (2019年12月16日 0時) (レス) id: 922f4f71bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みほ.。 | 作成日時:2019年12月15日 16時