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私が笑うと、登坂さんはいつものように、手で口を隠すように…肩を揺らして笑い出した。
臣「…戻ります?」
「…登坂さん戻ってていいですよ?私、そこのベンチでもう少し…座ってお月見します。こんなに穏やかな夜は久しぶりなので。」
そう…
1人で夜空を見つめると…
彼のことを考えてしまいそうで…
彼との思い出に浸ってしまいそうで…
怖くてゆっくりする時間を自分に与えないようにしてた。
でも…
登坂さんの思いを聞いて…
あぁ、完璧に見えるこの人ですら、沢山葛藤しながら毎日過ごしてるんだなぁ、私だけじゃないんだ…
そう思うと、静かな夜にゆっくり向き合って見たい…そう思えた。
ふさっと肩に感じる暖かい感触と…同時に薫った…甘いセクシーな匂い…
登坂さんが自分の着ていたジャケットをわたしの肩に掛けた。
「隠すの勿体無いだろうけど、すこし寒くなってきたでしょ?」
ネクタイを緩めて、ボタンを二つ外す仕草が綺麗。
「…登坂さんは?寒くない?」
「…俺、暑がり(笑)飲み物とってくる。つぎは?何がいい?」
「…………………リンゴジュース………」
…了解(笑)。
彼の背中を見送った後…
空に視線を向ける。
「今日は星も綺麗だなー。明日も晴れかな。」
『待っててくれてありがとう。これからもずっと…俺と一緒にいてくれる?』
『左手用は本番に用意してるから、これは予約ね。』
彼にそう言われて、指輪をもらったのもこんな月が綺麗な夜だった。
鼻の奥がツーンとした。
「大好きだったんだけどなぁ…。」
呟いて…何も付いていない右手の薬指を触る。
その時…
・
「え?……………仙崎先輩???」
背後から、聞き覚えのある声がした。
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作者名:まる | 作成日時:2018年5月13日 0時