Sweet four seasons〜9 完結

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臣side



治療開始前夜…


透明のカーテン越しの面会。


いつものように、2人で…カーテン越しにそっと手を合わせる。



「…これ終わったら…やっと思いっきり抱きしめられるな。」


俺の言葉に、ふふっと笑った彼女は…



透明のカーテン越しに、一枚の紙を見せてきた。


「…え…？……ちょっ…ちょっと！何で持ってんの？返して！」

すぐに自分が書いた文字に気がついて、恥ずかしさのあまり慌てる俺を見て、彼女は楽しそうに笑った。




「素敵な歌詞だね。すごく好き。」


「…うわー…猛烈に恥ずかしいわ…。」


「…ね、登坂。」


「何ー…」

恥ずかしさのあまり俯いていた顔を上げると…


そこには、ハッとするほど美しい微笑みで俺を見ている彼女がいた。


「…私の、冬の思い出は…貴方と一緒に過ごす時間が増えたこと、ずっと、可愛い健二郎の後輩だと思っていた貴方を、1人の男性として意識し始めたこと。びしょ濡れのキスに驚いて…花火大会でやきもちを妬いてる自分に戸惑ったこと。」


そう、真っ直ぐに俺を見つめて話し始めたA。



「…春の思い出は…自分勝手な強がりで、結果的に、自分のことも、貴方のことも傷つけたこと。とても辛い出来事だったけど…貴方の愛と優しさを沢山感じることができたこと。




夏の思い出は…貴方から沢山の愛をもらって…２つの自分の過去と向き合えたこと。……辛い記憶は少しずつ癒されて……愛する思いが、愛した記憶に塗り替えられたこと…




秋の思い出は…新しい愛を見つけていることに、気づいたこと。…愛する人の為に、最後に自分ができることは何か、考えたこと。覚悟することの難しさを知ったこと。愛する貴方に会いたくて仕方がなくて…愛するとは、耐えることなんだと、自分に必死に言い聞かせたこと。




登坂…私の思い出は……気がつけば、貴方のことばかり。」




俺を…愛おしそうに見つめた彼女は…




そっと、おでこを付けてきて…




導かれるように、俺も自分のおでこをそこに付けた。





「…二度目の冬の思い出は…幸せすぎる再会…かな…。」




囁くような声で目を瞑ってそう言った彼女に…






「…そして、二度目の春の思い出は…やっと叶った想い…になるんだろ？」






泣きたいのを必死に堪えながら、触れ合っている僅かな部分で彼女の全てを感じながら、俺はそう言った。





…絶対に…この温もりを失いたくないのに…






「…愛してるよ、登坂。」






最後みたいに……言うなよ、A。

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