君を想う〜第2章…1

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臣side

悪あがきだと分かっていながら、あの後、何度も彼女のいるフロアに行っては、空席のそこを見つめて心が沈んだ。…もしかしたら来てくれるんじゃないかとあの公園にも行ったけれど…彼女に会えることはなかった。

何を言われてもいい…俺のいない1ヶ月、彼女が1人で泣きませんように…そう願ってフィンランドに来る前日、全てを皆に話した。

「……本当にすみません。」

謝った俺に…言っていいものか…そんな表情をした後…
「…なんつうか…多分、臣の気持ちを1番よく分かってんのはAだよ。」
そう直人さんが言った。

全員が無言で直人さんの顔を見ると

「…あいつも…ここに来る前、すごい好きだった人と色々あって別れなきゃならなくって……新しい恋に行ってもいいもんか…悩んでた。……自分が臣だったら…きっとすごく苦しいから…少しでも早く……登坂さんが楽になれますように…そう思ったって…それと…簡単に大切な想いを片付けちゃう人じゃなくて、やっぱりそんなところが素敵だなって思ったって…言ってたよ？」

切なそうにそう笑って言った言葉の…後半部分はAが言っていたことだと分かり…

胸が締め付けられた。

「…臣が湖中をどれほど好きだったかは俺らが1番分かってる。別れ方が納得のいくものじゃなかったことも。だから…突然湖中が帰って来て、気持ちが揺らぐことも仕方がないって思う…俺はお前を責めることはできない…。…ただ、これ以上Aが傷つくのも見ていられない。…お前の中に少しでも湖中がいるうちは、Aにはもう関わらないでくれ。」

そこまで言うと、燈護さんは一旦言葉を切って…


俺を真っ直ぐに見た。


「…今の中途半端なお前の優しさは、残酷なだけだ。」



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「…撮影以外は…心ここに在らず…って感じね。」




今日の撮影が終わって、ホテルのカフェでコーヒーを頼んでぼーっとしていると頭上から降って来た声。


「…薫さん…。」



今回の俺の撮影には、薫さんが付いて来てくれていた。



「…ま…あんたの役得なところは悩めば悩むほど色気が…少なくとも三割増しになるってとこね。」
笑いながら俺の向かいに座る。


「…里穂が“今回は後悔したくないから頑張る。”って言ってたわよ？」


薫さんの言葉に、返す言葉が見当たらなくて力なく笑った。



「…一方で、市野辺ちゃんはまるでそもそも最初から何もなかったみたいに仕事してる。」


悲しそうに笑った薫さんは…



「…同じ愛なのに……こんなに形は違うのね。」



独り言のように呟いた。

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