君を想う〜第1章…3

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「………さん。






……市野辺さん？」







ハッと気づくと、取材が終わって、片付けが始まった現場。







目の前には、不思議そうな顔でこっちを見ているボーカルの2人。







「終わったけど…大丈夫？」
最初に名前を呼んだ今市さんに続いて、今市さんの少し後ろにいる登坂さんも心配そうにこちらを見ていた。






「すみません。大丈夫です。今、車の手配しますね。お二人は、着替えて帰る支度をしておいて下さい。」

そう言って、運転してくれている川口さんに電話をしようと邪魔にならない廊下の隅に向かった時…



グイッと腕を引かれて驚く。






「え？登坂さん？」







「…どうしたの？」






「？何がですか？」





「顔。」






「顔？」
何かついてる？慌てて触ってみていると…






「…じゃなくて…！」
笑いを堪えた登坂さんが

「また最初の頃みたいな怖い顔？無表情？になってたから。」
そう言って、私の眉間にぴしっと人差し指を置いた。





「え？本当に？すみません、気づかなかった…。」



「いや、なってるのは仕方ないけど、そうなった理由が知りたかったの。」







…








…








理由…








「…それは多分…」








「多分？」








口をついて出そうになった言葉に、自分自身で驚いた。








「…市野辺さん？」








「言えません！っというより、大丈夫です。気のせいでした！では、電話をしますので！」







「え？ちょっ…」




後ろで慌てる登坂さんのことは、振り返らずについてこれない女子トイレに入った。








『理由は、あなたの昔の恋話を聞いたからですよ。』









…直人









…今回は悔しいけれど直人の勝ちだよ。









…私、とっくに彼のことを好きみたい。

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